美しい桜と音-2学期編-










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第5章
15 改めて冬休みの約束
「んん…もう朝?」

目が覚めた美桜は外を見た。朝日が優希の部屋を照らしていた。横を見るとまだ優希は寝ていた。

「私…あの後どうしたっけ?」

全く思い出せない…優希とエッチした後疲れがどっと出たのか、眠くなってしまった。そして、気が付いたらもう朝だ。恐らく優希が抱っこしてベッドまで連れてきたのは間違いないが、それだとしたら優希に申し訳ないことをしてしまった。

「優ちゃん…」

本当に申し訳ないことをしてしまった。こんなことで怒る優希ではないが、呆れてしまったのはあるだろう…

「んん…ん?朝か…美桜起きたのか?」

髪をボサボサ掻きながら、優希は起き上がった。と…

「ん?美桜どうした?」
「優ちゃん…ごめんなさい。」
「へっ?」
「私…眠くなっちゃって…優ちゃんに迷惑かけちゃって…ごめんなさい。」
「ああ…昨日の件か。気にすんなよ、別に怒ってないし…」
「違うの。」
「じゃあ…なんだ?」
「優ちゃんも昨日…眠かったのに我慢してて…私だけ勝手に寝ちゃって…それに、優ちゃん怪我してたのに…私…最低な人間だなって…」

ポロポロと涙を零しながら美桜は謝った。あれほど優希を怪我人で扱っていたのに、それすら忘れて自分だけ寝てしまったのだから…

「はぁ…そういうことか。」

優希は優しく抱きしめた。

「俺のこと思ってくれたのか。ありがとな。」
「うん…だけど私…何も…」
「いいんだよそれで。前に俺に言ってたじゃねえか。『完璧じゃなくていい。』って。」

それはこの夏、美桜に『一緒に入ろ。』って言われたが、勇気が出ずに入れなかった優希に言った台詞だ。

「だから、美桜も完璧じゃなくていいんだよ。俺に付いて来てくれるだけで嬉しいからさ。だから泣くな。」
「うん…優ちゃん…うぇ〜ん…」

美桜は泣いた。優希は優しく背中を摩る。美桜が落ち着くまで…

「下おりよか?抱っこがいい?」
「うん…優ちゃんいいの?」
「ああ。」
「じゃあ…お願いします。」

目が腫れてたが、美桜は笑顔になった。朝から一緒にご飯を食べ、一緒に片付けもした。

「優ちゃん、私昼になったら帰るね。」
「えっ?もうちょい居てもいいんだよ?」
「明後日から学校だし、優ちゃんともっと居たかったけど、向こうでゆっくりしたいし…」
「そっか。」

そして昼前、美桜は帰る準備をした。

「優ちゃんまたね。」
「ああ。」
「冬、優ちゃん1人で来てよ?」
「1人で?ああ…言ってたなそういや。すっかり忘れてた。」
「もう…いいや。優ちゃんらしいし、絶対来てね?」
「うん。」
「優ちゃん…最後キスしてくれる?」
「どこに?」
「もう知ってるくせに…ここだよここ。」

美桜は指を指し、唇を尖らせた。優希は唇を合わせた。

「んん…」

甘い吐息が美桜の口から漏れた。

「はぁ…」
「じゃあな美桜。」
「うん。」

美桜は帰って行った。何度も見返り手を振り続けた。またしばらく会えないが、この冬は自分が会いに行く番だ。

「さあて…ゆっくりして…ん?」

ドアを閉めようと思ったが、裏に人影が見えた。その人物はすぐにわかった。

「美音か。何してんだよ?」
「バレちゃった?」
「何隠れてんだよ?」
「何も見てないから大丈夫。美桜ちゃんと長〜いキスしてたの見てないから…」

完全に一部始終を見ていた。優希は頭を抱えながらドアを閉めた。美音をほっといて…

「ちょっとお兄ちゃん、開けてよー。謝るから開けてよー。」

その後しばらく中に入れてもらえなかったのは言うまでもないだろう…

夜明け前 ( 2018/01/08(月) 15:54 )