美しい桜と音-2学期編-










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第3章
03 塾を辞めた理由
「ただいま。」
「おかえりお兄ちゃん。」

家に帰ると笑顔で出迎えてくれる美音がいた。最近の美音は優希のためを思ってか、昔みたいに『お兄ちゃん、お兄ちゃん。』というのはなくなっていた。

「なんかだるそうだけど、なんかあったの?」
「塾行ってた時の知り合いに会っただけなんだけどな。」
「そっか…お兄ちゃん塾行ってたもんね。1年足らずで辞めたもんね、『家のために。』って言ってたもんね。」
「まあ父さんも母さんもおらんしな、なんとかして美音と一緒に暮らしてかなって思ったら、部活も塾も辞めな無理だなって思ってさ。その割にはあまりわがまま言ってなかったよな、ごめんなこんな兄で。」
「いいよお兄ちゃん謝らないで。私こそお兄ちゃんを助けれなかった。」
「美音が謝ることじゃないだろ?こんな俺についてきてくれただけでも、嬉しいよ。ありがとな。」
「うん。」

優希は美音の頭を撫でると上に上がって行った。美音にはまだ麻衣とデートすることは伝えてない。だが、敢えて伝えずにいこうと思った。余計心配するかもしれないが、わざわざ言わなくてもいいだろうと思った。

(これ以上美音に迷惑はかけたくないしな…それならいっそのこと、何も言わずただ『出かけて来る。』って言った方がマシだな。)

優希はそう思った。そして、その日まで何も言わないことにした。バレないように…

夜明け前 ( 2018/01/03(水) 15:31 )