美しい桜と音-2学期編-










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第9章
03
(あの車…)

優希には見覚えがあった。間違いでなければあの2人だ。

「優希君知ってるの?」
「ああ、多分親父と母さんだ。」
「お父さんとお母さん?」
「滅多に帰って来ないからさ、美音と2人だけの生活だったからね。」
「前に聞いたね、でもそれは大変だったよね?」
「慣れたけどね。さ、家入るか。」

ほんと丸っと1年振りかもしれない、優希は久しぶりに親と会う。

「ただいま、親父に母さん帰って来たんだ。」
「おー優希か、久しぶりだな。元気そうでよかった。なぁ、母さん。」
「ええ、優希心配かけてごめんね。大変じゃなかった?」
「慣れたから大丈夫。」
「すまんな、父さんらもやっと目処が立ったんだ。これからは、普通の仕事になる。」
「結局何?出張って考えていいの?」
「まあそれに近いやつだ。けど、もうこれからはない。家にいるから安心しろ。」
「やっと4人での生活か…長かったな。」

ほんと長かった。去年も戻っては来たが、ほんの数日だった。だが、優希のお父さんが言ってるのが本当なら、優希の負担はもうない。学校も行って家のこともしてほんときつかった。それのせいで部活も辞め、バイトも考えたが、流石にやると死ぬと思った。

「これからゆっくり羽伸ばせるな。」
「これでまた出張とか辞めてよ?」
「もうない。」
「母さんほんと?」
「ええほんとよ。」
「それより、お前の後ろにいる子は誰だ?」
「ああ、兒玉遥ちゃん。福岡から引っ越して来て俺と一緒の学校に通ってる。」
「そうか。遥ちゃん、ゆっくりして来なよ。てか、一緒に住んでるのか?」
「遥ちゃんとこの事情があってね。」
「そうか。」
「優希の彼女?」
「え…何言い出すの母さん?」
「お前もそろそろ考えたらどうなんだ?父さんと母さんがいない間に女の子にアタックしたんか?」
(言い方あるでしょ?言った方がいいのか?)

確かに彼女はいる。だが、親に言うべきか?悩む優希だった。

夜明け前 ( 2017/08/27(日) 16:00 )