第4章
戻って欲しかった
「優希…今日呼んだのは直接謝りたかったの…」
「…………」
「私のせいで優希のことも考えずに好き勝手使って…」
「…………」
「初めて優希を見た時…すごく可愛かったから…それで暴走しちゃって…」
「…………」

相変わらず無言を貫く優希、しかし…

「私あの後学校辞めることになってね…」
「!?」

優希は驚いた。こんなことを知っているのはほんの僅か…でもなぜ由紀は学校を辞めることになってしまったのか?

「なんで辞めたんですか?」
「先生からハナから目をつけられてたの。」
「え…」
「私が奴隷行為に至ったのは二年の後半ぐらいだったかなぁ…独り占めしようと思ってからその行為が段々エスカレートしちゃって…」
「二年の後半から…いつから先生は…」
「その前から様子がおかしいって思ってたみたい…だけど、先生らは敢えて知らないフリをしていたの…当然私は知らなかったからどんどん奴隷を作って…」
「終いに見つかって…」
「そう。だから辞めたのは優希が学校来なくなって数週間もしなかったかなぁ…」
「そうだったんですか…」

全然知らなかった由紀のその後…先生も我慢の限界だったんだろう…

「実を言うと私の最後の奴隷は優希、あなただったの。」
「え…俺ですか?」
「うん。それで、逃げたのも優希だけ、みんな私の指示に従ってた。」
「…………」
「でも今思えばそれがよかったのかも。あのままずっと続いてたら新しい奴隷雇ってたかもしれないし…ある意味優希が逃げたのは正解かもね。」
「…………」
「優希ごめんね…」

由紀は最後の方は涙を浮かべながら語っていた。優希は静かに頷いていた。

「先輩…顔上げてください。」
「優希…」
「確かに先輩に嫌な思いをさせられました。けど、先輩といた時間ほんとに楽しかったです。あんな羽目になるとは思いませんでしたけど、正直俺…昔の先輩に戻って欲しかったです。」
「優希…」
「俺を可愛がってくれる先輩に戻って欲しかった…先輩好きだったから…」
「!?」

優希から言われた『好き』。由紀は泣いてしまった。自分はなんてことをしてしまったんだと…

「ごめんね優希…ほんとにごめんね…」

由紀は優希を抱きしめた。

「先輩…泣かないでくださいよ…俺まで泣けてきますよ…」
「うん…優希。」
「はい。」
「うちの家来る?」
「はい。」
「わかった。行こか?」

優希は由紀の家に向かった。

夜明け前 ( 2017/10/23(月) 18:43 )