意気地無し
03
気がつけばもう少しで学校が冬休みへと入る。試験も終わり、残すはテスト返却と終業式を残しているところだ。

テスト期間、勉強がダメダメな私は部活終わりの侑也に勉強を教えて貰った。この前よりかは緊張はしなくなった気がする。だけど気付いたら侑也の顔を見すぎてしまっていたような気がする。

この気持ち、侑也に知って欲しいけど知って欲しくない。こんな葛藤が私の中でずっとあった。

「今日部活オフになったから遊ばね?」

テスト返却中、感じた携帯のバイブレーション。先生から見えないように携帯を手に取ると、侑也からのメッセージだった。

『えっ…!』

思わず声が出てしまう。慌てて右手で口元を押さえ、聞こえないようにしたがそれは暖簾に腕押しだった。

「金川どうした?」
『い、いや!なんでもないです!』

先生にはその音が届いてしまい、名前を呼ばれてしまう。その結果みんなにも注目され、恥ずかしい気持ちになった。

「そうか。静かにしとくようにな」
『はい…すみません』

しょんぼりして頭を下げる。だけどこのしょんぼりはどうだっていい。気持ち的に考えれば、しょんぼり<嬉しさ、の式が成り立つ。

今日は侑也とデートができる、こんなことを考え出したらニヤニヤが止まらない。周りに見られたらなんて思うと、どこからか視線を感じる。

その方に向けば、それはやっぱり真佑だった。真佑もニヤニヤしながら口パクで「なんかあった?」と私に向けて言う。
『なんかあったの!』と私も口パクで返すと、真佑は小さく手をぱちぱちと拍手をして笑っていた。

「田村どうした?」
「いえ、なんでもありません!」

そんなことしてたら先生に見つかるよって教えてあげればよかったね。でよそんな真佑を見て、私はお返しだと言わんばかりに笑ってやった。

授業終わりのベルが鳴ると同時に真佑が私の席にやってくる。

「なにがあった!?」
『侑也から遊ぼって、言われたの!』
「キャー!何それめっちゃ羨ましい!」

真佑の高い声がより一層高く聞こえてくる。金切り声に近いのか否か。そんな真佑の声は放課後になるまで止まなかった。

一足先にテスト返却が終わった私は、侑也のクラスへ足を運ぶ。廊下から見た感じ、まだテスト返却の授業が残っているようだ。私のクラスは昼前にテスト返却が終わったが、侑也のクラスはまだもう一コマあるみたいだった。

私は教室に戻り、真佑と二人で駄べることにした。駄べるというより作戦会議みたいなものだ。とはいいつつも話しているのはいっつも真佑だけど。

話し込んでいると、廊下に侑也のクラスの人達が見えた。彼らは既に荷物を背負って歩いていた。

『じゃあ行ってくるね』
「うん。バイバイ!」

真佑と別れ、やってくる波に向かうように侑也のクラスへ向かう。やっぱり1人で侑也のクラスに行くって緊張して、だけどなんだか嬉しくて。そんな気持ちが湧き起こる。

侑也のクラスのドアを開けると、今度は前みたいに突然現れることは無かった。だけど侑也は、違う女の子と楽しそうに話している。

今行ったら、ちょっとお邪魔かもしれない。そう思い、1歩入り込んだ足を戻そうとする。

「お、紗耶!待ってたよ」
『あ、え、うん!』

侑也はその女の子に「バイバイ」と手を振って別れると、私の方に来てくれる。そのまま二人で廊下へと出た。
一瞬横目に見ると、その女の子の表情が悲しそうなだった。弱い視線だけが感じられた。

「紗耶?どうかした?」

その子に意識がいくあまり、ぼーっとして突っ立っていたみたいだった。僅かに前に進んだ侑也が私に声をかける

『え、なんでもないよ!』

横目に見ていた彼女から視線を侑也に戻し、小走りで追いかけた。

Tone/とーん ( 2020/01/16(木) 21:11 )