意気地無し
01
──私に告白する勇気があったら良かったのに。

かれこれ君と出会ってからもう何年経つのだろうか。
小さい頃からずっと一緒にいて、泣いて笑って。いつしかこんな関係が、こんな日常がずっと続くものだと思っていた。

だけど、ある日から変わってしまったんだ。

君が、高橋侑也が私の想い人になってしまった日から──

「おーい、紗耶帰るぞ」
『ちょ、待ってよ!』

いつものような放課後。侑也が部活のない日に一緒に帰るのだ。私は部活に入っていないので、こうして一緒に帰るのが普通になっていた。

小さい頃よりかなり伸びた背。一緒の高さだった目線が今では私より上にいた。

学校を出た途端、一気に寒さが押し寄せてきた。なんだってもう一月だ。幾らこの寒さを経験しているとはいえ、毎年身を震わせてしまっているのが悔しい。

「女子ってほんと寒そうだよな」

白い息が出るくらいの寒さ。そんな白い息がふわっと消えていくような声だった。

『ほんとだよ!』
「ほら、寒そうだからこれやるよ」

そう言って手にしていたマフラーで、私の首元を覆ってくれる。

『え、いいの?』
「うん。紗耶寒そうだもん」

侑也は何も付けていないのに、わざわざ私にだけ付けてくれれた。でも侑也が寒そうにしながら、両手に息を吐きかけているのを見ると申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。

『侑也だって寒そうだよ···』
「紗耶が温まってくれたらいいんだよ」

大きなその手で私の頭をくしゃくしゃと撫でてくれる。髪の毛がくしゃくしゃになるのは嫌だけど、侑也がしてくれたと思うと変な笑みが止まらなくなる。

怒ったように、だけど気持ちは笑っているように私は侑也を見つめる。ちょっと上目遣いかもしれない。その分侑也が上から優しく見つめ返してくれる。

その瞬間、胸がキュッと締まるような、何度も何度も感じたあの感覚がした。

『もう、何よ!』

耐えられなくなって、恥ずかしくなって目を逸らす。そんな私の胸の鼓動はどんどんと早くなっていた。

「ほら着いたぞ」

気づけば私の家の前に。少し家が離れているのに、こうしていつも家まで送ってくれる侑也の優しさを改めて噛み締めた。

そして彼と一緒にいれる夢のような時間が終わってしまう。胸のトキメキを感じれる時間が終わってしまう。

『送ってくれてありがとう』
「うん。じゃあまた明日な」
『うん!』

とびっきりの笑顔を見せれていると思う。

『あ、マフラー!』
「いいよ、また明日持ってきて」

そう言い残して侑也は後ろ手で軽く手を振った。見えていないだろうけど、私も懸命に手を振った。

侑也のマフラーを首にちゃんと巻きながら、彼の残り香を優しく撫でながら目を閉じる。

あぁ、なんでこんなにカッコよくなったんだろう。

私の胸の奥の、気持ちの箱は好きの言葉で一杯になっていた。



Tone/とーん ( 2020/01/14(火) 04:48 )