かけがえのない虹になる
太田夢莉
始まるわけじゃないけど
 私は今、すごく気まずさを感じている。歩き始めたものの会話がなくて大変気まずい、何か会話したほうがいいけど、何を話そう? 何でうちの学校にとかいきなりプライベートなことを聞くのも悪いし、やっぱり無難に天気とか気候の話でとにかく間を埋めよう。じゃないとこの坂を無言で上り続けることになる。
「あのさ」
「あの」
 あちゃー、完全にタイミングが被った、更に気まずい。
「なに? 凜々花」
「夢莉ちゃんからでいいよ」
 まずい、このままでは沈黙以上の不毛な譲り合いが始まってしまう。先手を打つべきだ。
「大したことじゃないから凜々花からどうぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「うん、どうぞ」
「何で夢莉ちゃんはこんな時間に歩いてるの? 始業の時間過ぎてるよね?」
「実は、木から降りられない猫を木登りして助けてたらこんな時間に」
「すごい! 夢莉ちゃんは私も猫も助けてくれて、優しいしかっこいいね。それで膝も擦りむいたの?」
 よりによってそれ聞いちゃう? すごい笑顔でこっち見てるし。
「この怪我は、そのあとに走って転んだ」
 恥ずかしいので目を合わせず答える。
「うん、それは災難だったね」
 声が震えてて顔を見なくても笑ってるのが伝わってくる。
「馬鹿にしてるでしょ?」
「馬鹿になんてしてないよ、ただ可笑しかっただけ」
「別にいいですよ、自分でも運動神経が悪いのは自覚してますから」
「そんなに拗ねないでよ夢莉ちゃん。でもすごいって思ってるのも本当だよ、運動神経が悪いのに木登りして猫を助けるなんて本当にすごいよ」
 そう言われて視線を戻すと目の前に笑顔の凜々花がいた。その瞳が本当に綺麗で引き込まれそうで、一瞬、呼吸を忘れる。
「そう言ってくれて、ありがとう」
「いえいえ、こちらこそありがたやです」
「なにその言い方」
 凜々花の言い方がツボに入って吹き出してしまう。
「これは昔からの口癖みたいなもんです」
「素敵な口癖だね」
「馬鹿にしてる?」
「馬鹿になんてしてないよ、ただ可笑しかっただけ」
 さっきの凜々花の言い回しをそのまま笑顔で返す。
「夢莉ちゃんは優しいけど意地悪だね」
「さっきのお返しですから」
 そんなやり取りをしながら、二人で笑いながら歩いていると目的地が見えてくる。
「見えたきた、あれが校舎だよ」
「結構、坂がきついね」
「もうちょっとだよ。はい、到着! ようこそ難波学園へ!」
「あー、やっと着いた! ありがとう夢莉ちゃん。夢莉ちゃんに会わなかったらまだ迷ってたかも」
「どういたしまして」
 お礼に答えながら校舎の入り口まで行くと、誰かが立ってるのが見えてきた。
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混老頭 ( 2017/12/07(木) 03:36 )