かけがえのない虹になる
太田夢莉
第一話
 高校二年生なったばかりの始業式当日、私はいつものように通い慣れた通学路を歩いていた。
 ただし、現在の時刻は【8:54】である、スマホの時計で確認したのでまず間違いないだろう。
 決してサボろうとしてるわけではない。では、なぜ、こんな時間までうろうろしているかというと、お恥ずかしながらこの右膝の擦り傷の理由とともに説明しよう。

 
 
 時は遡ること1時間前、通学途中の私は木の上で震えている猫を見つけた。
「おーい! キミは何やってるんだい? 降りられないのかい?」
 私は猫へ語り掛けるが返事がないないので心配になり、木に登って降ろすことを決意した。
「待ってろ、今、降ろしてやるぞ」
 意気込んだが良いが私はすこぶる運動神経が悪い、木を登るのにに30分程掛り、なんとか、猫のいる枝に手が届きそうな位置まで登れた。
「届きそうで届かない」
 私は懸命に手を伸ばし、猫を掴もうとすると、今まで動かなかった猫が突然木の枝から飛び降りた。
「駄目! 危ない!」
 私は思わず叫び、下を見ると華麗な身のこなしで着地する猫の姿があった。
「降りられるんかーい!」 
 ツッコミを入れつつ安堵した私は、木を降りることにした。無論、登るのに30分程要した私は、降りるのにも同程度の時間を要した。
 以上が、私がなぜ未だに学校にたどり着いていないかの説明である。
 なお、右膝の擦り傷はその後にダッシュしてただ単純に転んだのだ。
 
 

 そして現在、痛みに耐えながら学校までの道のりを歩いていると、目の前に地図を片手に右往左往している見たことのない制服の女の子が居た。


混老頭 ( 2017/11/21(火) 04:49 )