乃木坂高校












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第8章
感動と絶望
その後、2人でお祭りを回り、最後の花火を見る時に史緒里の友達と合流した。

まさみ「史緒里〜!ここ!特等席取っておいたよ!」
史緒里「あーっ!ここ懐かし〜!ここはね、地元の人だけが知る穴場なんだよね!」
和也「そうなんだね。楽しみだな〜!」
史緒里の友達が取ってくれていた場所に座る。

史緒里「あれ?彼氏さんは?」
まさみ「なんか、眠くなったみたいで帰ったよ!それより、史緒里!そのぬいぐるみ」
史緒里「えへへっ、取ってもらったんだぁ!」
まさみ「いいなぁ〜!カッコいい彼氏で羨ましい!」
史緒里「だから違うってばぁ〜!」
2人のやり取りを見て、和也は顔を赤くしていた。

そして、少し経つと花火大会が始まった。
『ヒュ〜〜、パァン!!』
夜空に綺麗な花火が打ち上がる。

史緒里「うわぁ〜!綺麗〜!」
横を見ると、史緒里が空を見上げて目をキラキラさせている。
史緒里「幸せだなぁ〜」
史緒里はそう呟き、和也の手を握った。

宮城で見る初めての花火。
それは見慣れた地元の花火大会とは違い、凄く綺麗で美しくも思えた。

そして、花火はクライマックスに近づく。
夜空に大量に色とりどりの花火が打ち上げられ、迫力が倍増する。

史緒里「すご〜い!!」
花火に夢中になって気づいていなかったが、いつの間にか史緒里との距離が近くなっており、腕と腕が触れ合っているほどだった。

史緒里の顔も近くなっており、花火で明るく照らされる美しい横顔に和也は目を奪われていた。

史緒里「和也くん、ありがとうね?」
史緒里は和也が見ていることに気づいたのか、和也の方を向いて目を合わせた。

和也「こちらこそありがとう」
和也は照れ臭くなり、史緒里から目を逸らす。

史緒里「ねぇ、和也くん…」
史緒里は和也の名前を呼んで目を閉じた。
和也は史緒里の友達のことを気にしたが、史緒里越しにいる友達は花火に夢中になっていたので、こっちのことは見えていない。

和也はゆっくり史緒里の顔に近づき、そっとキスをした。

史緒里「へへっ。なんか恥ずかしいね?」
史緒里は握っていた和也の手を強く握った。

まさみ「最後すごかったね〜?」
史緒里「ほんと凄かったね!綺麗だったなぁ〜!」
花火大会が終わり、余韻に浸っている2人。
しかし、和也と史緒里は大事なことを忘れていた。

まさみ「そういえば史緒里はどこに泊まるの?」
史緒里「泊まる?私達は日帰りの予定だよ?」
まさみ「日帰り?電車間に合う?」
史緒里「……。あーっ!!!」

史緒里は時間を確認すると、聞いたこともない大きな声で叫び出す。
和也「どうしたの?」
史緒里「ヤバい!電車!」
和也「電車?電車がどうしたの?」
まさみ「ここ、田舎だから最終電車が早いのよ!史緒里、間に合う?」
史緒里「わかんない!でも、急がなきゃ!和也くん、行くよ!まさみ!今日はありがとう!また連絡するね!」

史緒里は急いで立ち上がり、和也の手を引いて走り出した。

和也「うわぁ!あ、ありがとね〜!」
まさみ「ちょっと史緒里!!あれなら家に…」
友達が何かを叫んでいたが、史緒里は慌てすぎて、全く聞いていなかった。

和也「史緒里、間に合う?」
史緒里「はぁ…はぁ…どうだろう。ギリギリかも」
駅まで走る2人。花火を見ていた穴場はお祭り会場から離れた所だったので、少し距離が遠くなっていた。

史緒里「見えた!!」
駅が見えて、ホームに入ろうとした瞬間、無常にも最終電車が発車してしまった。

駅に取り残された汗だくの史緒里と和也。
史緒里は泣きそうな顔をして、立ち尽くしているのであった。

しゃもじ ( 2022/02/06(日) 12:07 )