乃木坂高校












小説トップ
第5章
みんなのヒーロー
「ただいま〜」和也は家に帰ってくると、「兄ちゃん!!」と叫びながら、慌ててさくらが玄関まで来た。
和也「なに!?どうしたの?」
あまりの慌てぶりに、和也も身構えてしまう。
さくら「手!!大丈夫なの?」
和也「手?なんで知ってるの?」
さくら「さっき、かっきーから連絡が来た。さくちゃんが介抱してあげてって」
和也「そうなんだ。俺は大丈夫だよ」
さくら「もうっ!無茶ばっかりして!かっきーは大丈夫なの?」
和也「それも遥香から聞いた?」
さくら「聞いてないよ。連絡してる時に、兄ちゃんが帰ってきたから」
和也「そうなの?なら、なんで知ってるの?」
さくら「詳しい内容はわからないけど、かっきーと登下校するのに理由があるのは分かってたから。兄ちゃんが嘘つく時の癖が出てたから」
和也「えっ?俺、嘘つく時に癖なんか出てるの?」
さくら「うん。昔から嘘をつく時は頭をかく癖があるよ?気づいてないの?」
和也「だから、さっき遥香にも!」
和也は公園で、手のことを隠そうとした時に、遥香に一瞬でバレた。
たまたまだと思っていたが、ちゃんと理由があったみたいだ。

その後、寝る前に今日のことをさくらに説明した。
話が終わると、さくらは目に涙を溜めながら、抱きついてきた。
親には心配をかけたくなかったので、手の事は転んだと嘘をついた。
和也が言うと一瞬でバレるので、さくらが頑張って誤魔化してくれた。

翌日の放課後。レッスンが始まる前に、みんなが周りに集まって、昨日のことを慰めてくれた。
美月「遥香ちゃん、大丈夫だった?」
美波「怖かったよね…」
美月さんや美波さんが優しく抱きしめてくれる。
飛鳥「まったく!私の後輩に手を出しやがって!ふざけるなーっ!」
絵梨花「本当だよ!もう、許さないんだから!」
真夏「飛鳥、いくちゃん、怒る気持ちも分かるけど、落ち着いて?」
怒ってる飛鳥さんと生田さんを宥める真夏さん。
桃子「うえーん。遥香ちゃんが…」
史緒里「桃子〜。桃子が泣いたらダメだよ〜」
祐希「そういう久保もじゃんかぁ〜」
私のために泣いてくれる桃子さん、久保さん、与田さん。
他の先輩メンバーも慰めてくれた。
美月「和くんに聞いたけど、その人は退学じゃなくて、謹慎になったんだよね?」
真夏「えぇ!そこまでして退学じゃないの?」
飛鳥「先生に講義しに行こ!」
みんなが立ち上がり、レッスン室を出ようとする。
遥香「あ、あの!私がそれでいいって言ったんです」
史緒里「えっ?遥香ちゃんが?」
遥香「はい。確かに怖かったし、もう2度と顔も見たくないって思ったんですけど、退学にするのは違うかなって…。今回のことをしっかり反省して、償ってもらえればいいかなって…」
美月「遥香ちゃん…」
遥香「それに、退学になるより、謹慎の方が彼にとっても厳しい道だと思うんで…」
真夏「そうだね…。遥香ちゃんは強いね?」
遥香「強くなんかないですよ?正義のヒーローに強く守ってもらってるんです!」
美月「ふふっ、そうだね!私達には正義のヒーローがいるもんね!」
美波「そうだね〜!でも、こうやって見ると頼りないよね〜」
みんなの視線の先に、壁にもたれて爆睡している1人の男が。
絵梨花「まさか、レッスン前に寝ちゃうなんてね」
飛鳥「うりゃぁ!おりゃ〜!」
真夏「こらっ、人の顔をおもちゃにしないの!」
遥香「先輩!レッスン始まってますよ!」
私が耳元でそう話しかけると、「えっ!?ごめんなさい!」と和くんが慌てて目を覚ました。
和也「えっ…?なに…?みんなは何で笑ってるの?」
寝ぼけた和くんを見て、メンバーは笑った。
美月「和くん寝ぼけすぎだよ〜!」
飛鳥「レッスン前に寝るなんて、いい度胸してるなぁ〜!」

私もみんなの姿を見て笑った。
これから先、怖いことも辛いこともいっぱいあると思うけど、メンバーとこの人が居れば大丈夫だと強く思った。
でも、いつかは私だけのヒーローになってほしいな…。

しゃもじ ( 2021/11/02(火) 07:14 )