乃木坂高校












小説トップ
第4章
姉妹
選抜発表から1週間が経った。
「はぁ…」私はお昼休みに1人でため息をついていた。
毎日、レッスンで怒られて、先輩たちにも迷惑をかけて、ここでやっていける自信がなくなり、帰りたいとも思っていた。

祐希「ごんぞう元気かな…」
お母さんから送ってもらったごんぞうの写真を見ていると、「ごんぞうって彼氏なん?」と、誰かに優しい声で話をかけられた。
私は顔を上げると、そこには憧れのあの人がいた。
祐希「西野さん…」
七瀬「隣座ってもいいかな?」
祐希「えっ、あっ…は、はいっ!!」
突然のことで声が裏返ってしまった、
七瀬「ありがとう。それで何見てたん?彼氏の写真?」
祐希「ち、違います!!お家で飼ってるヤギの写真です!」
七瀬「ヤギ?与田ちゃんのお家はヤギを飼ってるの?ちょっと見せてもらってもいいかな?」
祐希「は、はい!どうぞ!」
私は七瀬さんにスマホを見せた。
七瀬「ほんまにヤギや!可愛いなぁ」
祐希「この子がごんぞうって言うんです!」
七瀬「ふふっ。この子がごんぞうなんや!彼氏の名前かと思ったよ」
西野さんは、柔らかい優しい笑い方をする人だった。

この後も西野さんに、お家で飼っているペットの写真をたくさん見せた。
西野さんは楽しそうに、お話をちゃんと聞いてくれた。
七瀬「ふふっ、なんか与田ちゃんのお家に行きたくなったわぁ〜。てか、もうこんな時間やん。戻らなかんな」
西野さんとの楽しい、幸せな時間が終わった。
私は寂しくなり、たぶん表情が出ていたのだと思う。
七瀬「それじゃ、明日のお昼休みにここに集合しよっか?」
西野さんはそれを感じ取ったのか、明日のお昼も一緒にと誘ってくれた。
祐希「えっ…いいんですか?」
七瀬「うんっ!ななも与田ちゃんとお話ししたいからね!それより、与田ちゃんじゃなくて、祐希って呼んでもええかな?」
祐希「は、はい!!お願いします!」
七瀬「ふふっ、めっちゃ声でかいで?なら、ななのことも七瀬でいいからね?」
祐希「すみません…。七瀬さん…」
憧れの人と、緊張して全く話せなかった人と一気に縮まった距離。私は信じられなくて、放心状態になる。
七瀬「おーい。祐希〜。次の授業遅れちゃうよ〜?」
祐希「はっ!ごめんなさい!」
七瀬「ふふっ、ほんま面白いなぁ〜。なら、いこっか?」

この日から私と七瀬さんは、お昼休みを一緒に過ごすことになった。
七瀬「祐希、何かに悩んでない?」
ある日、突然、七瀬さんが聞いてきた。
祐希「えっ、どうしてですか?」
七瀬「なんとなくやけど、なんかあったのかなって。ななで良かったら聞くよ?」
七瀬さんは優しい表情で言ってくれた。
祐希「祐希…このままここに居てもいいのかなって思ってるんです。センターに選んでもらったのに、レッスンでミスばっかりで、先生や先輩に迷惑かけて…自分でもどうしたらいいのか分からなくて…なんかもう怖くなっちゃったんです」
七瀬「うん…」
祐希「祐希がこの学校に入ったのは、七瀬さんに憧れたからなんです」
七瀬「ななに?」
祐希「はい。たまたま家族と旅行に来てたら、みなさんがライブをしていて。センターで歌って踊っている七瀬さんに、憧れたんです。祐希もこの人みたいになれるかなって思って。でも、全然ダメでした。七瀬さんみたいに、カッコよくなれないんです」
私は自然に涙が溢れた。すると、肩に少し重みを感じた。
肩には七瀬さんが頭を乗せていた。

七瀬「ななだって変わらないよ?」
祐希「えっ…?」
七瀬「ななもセンターを何度かやらせてもらったけど、怖いし逃げ出したい。それに、最初の頃は泣いてばっかりだったし」
祐希「七瀬さんも…?」
七瀬「うん。センターってその楽曲の顔になるから、なながミスしたらとか、みんなの思う価値観とズレてたらって思うと怖くなる。
でもね、怖いだけじゃダメなんだって思ったの。基本的に楽曲は選抜制やから、全員がステージに立てる訳じゃない。その立てなかったメンバーの為にも強くならなきゃって。
自分が強くなる事によって、もっと乃木坂高校のアイドルを知ってもらおうって思った」
祐希「強くなる…」
七瀬「でも、1人じゃ強くなれないとも気づいたかな。メンバーに支えてもらって、助けて、助けてもらって。1人じゃなくて、グループで強くなるんだって思ったの。祐希にも桃子ちゃんとかみんなが居るでしょ?だから、みんなで強くなろうね?」
七瀬さんの言葉が素直に私の胸に入ってくる。
あんなにカッコいい七瀬さんも祐希と同じなんだ。
七瀬「それに、頼りたいけど、ななも祐希を支えたいと思ってる。だから、1人で抱え込まずに、何かあったら話すんだよ?」
肩の重みがなくなり、頭が優しく包まれる。
七瀬さんは、私の頭を撫でながら、私の好きな、大好きな表情をしていた。

七瀬さんにお話を聞いてもらってから、少しずつ変わった。
先生「与田、大園!いいぞ!その調子だ!」
レッスンでも褒められる事が多くなった。
桃ちゃんもいつの間にか、表情が柔らかくなり、白石さんとも仲良くなっていた。

高山「なーちゃんと与田ちゃんって、なんか姉妹みたいだよね」
ある日、突然、高山さんがそう言ってくれた。
七瀬「あーっ!それか!なんか、祐希は後輩ともメンバーとも違う何かを感じてたけど、妹っぽいんやな!」
祐希「祐希、七瀬さんの妹になりたいです!」
私は七瀬さんに抱きついた。
七瀬「ほんま祐希は可愛いな〜!よしよしっ」
七瀬さんに頭を撫でてもらって、私は犬のように喜んだ。
秋元「あれじゃ、妹と言うよりペットみたいだね」
桜井「そうだね。でも、可愛い」
高山「与田ちゃんなら食べれそう」
若月「いやいや、かずみんのその発言はやばいって…」

そして、半年以上が経って、私は七瀬さんから、信じられない言葉を聞く事になる。

■筆者メッセージ
すみません!
少しの間、更新時間遅くなります!
しゃもじ ( 2021/10/23(土) 10:49 )