乃木坂高校












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第3章
アドバイス
卓球が終わり、みんなで女子バスケの試合を観に行く。
会場に着くと、さくらの姿が見えなかった。
和也「早川さん、さくらはどこにいるかな?」
早川「あっ!先輩!良いところに来てくれました!さくちゃんが!」
和也「さくらがどうしたの!?」
柴田「緊張のあまりあそこで泣いてるんです」
金川「今、かっきーがついてくれてるんですけど」
体育館の隅を見ると、しゃがみ込んで泣いているさくらと、それを慰める遥香の姿が。
和也は2人の元に近づいていく。
和也「さくら、大丈夫?」
遥香「あっ、和也くん。さくちゃんが緊張しちゃって…」
和也「うん。さっき早川さん達に聞いたよ。遥香も準備あるでしょ?ここは俺に任せて?」
遥香「はい。さくちゃんのことお願いします」
遥香は準備をしに立ち去り、和也はさくらの横に座った。
和也「さくら。緊張してる?」
さくら「うぅ…。うん…私がミスして負けちゃったらどうしよう…」
和也「さくらはみんなのこと好き?」
さくら「うん…でも、急にどうしたの?」
和也「みんなもさくらのこと好きだと思うよ。だから、失敗しても責めたりしないし、なにより勝ち負けよりも、さくらと楽しくやりたいんじゃないかな?」
さくら「楽しく…?」
和也「うん。もちろん勝つことも大事だよ?でも、それよりもみんなで楽しむことが1番じゃないかな?ギスギスして勝っても嬉しくないでしょ?」
早川「そうやよ!せいらはさくちゃんと楽しくバスケしたい!」
金川「うんうん!みんなで楽しく笑顔でね!」
柴田「勝っても負けても精一杯やれば、絶対楽しいよ!」
遥香「それに、誰かのミスはみんなでカバーしればミスじゃなくなるよ!だから、さくちゃん、1人で抱え込まなくてもいいんだよ?」
さくら「みんな…」
和也「ほらっ、みんな笑顔なのにさくらだけ泣いてたらダメじゃん!ねっ?」
さくら「うんっ!!兄ちゃん、私、頑張るね!みんなありがと」
いつも通りの優しい笑顔をするさくらに戻った。
和也「うん。それじゃ、みんな楽しんでおいで!」
『はい!!』みんなは返事をしてコートに向かった。

和也も応援で集まったメンバーの元に戻った。
沙耶香「さすがお兄ちゃんですね!」
筒井「みんなが笑顔になりました!」
和也「俺は何もしてないよ。みんながさくらと仲良くしてくれるからだよ」
矢久保「さくちゃんって存在自体が天使ですよね!尊いです!女神様です!」
興奮して話し出す矢久保さん。
それを見てみんなは笑っていた。

そして、女子バスケ決勝が始まった。
相手は3年生の普通科。秋元さん情報だと、経験者も多いらしい。
1年生も、遥香と金川さん中心に食らいつく。
一進一退の攻防が続き、1年生が3点ビハインドで前半が終わった。
秋元「みんなすごいよ!よくやってるね!」
高山「うんうん!この調子でいこ!」
先輩がみんなを鼓舞している。
遥香「はぁ…はぁ…。和也くん、なんかアドバイスあるかな?」
和也「アドバイス?うーん。たぶんだけど、後半は遥香と金川さんに対するディフェンスが強くなると思うかな。ごめん。それだけしかわからないや」
遥香「ううん。ありがと!注意してみるね!」

ハーフタイムが終わり、運命の後半戦が始まる。
1年生チームがボールを持ち、遥香にボールが渡ると相手ディフェンスが2人ついた。
生田「あれ?賀喜ちゃんに相手が2人もいるよ?」
秋元「なんだっけ?ダブルチームってやつだったような」
美月「和くん、ダブルチームって何?」
和也「詳しくはわからないけど、上手い選手を防ぐために、2人でディフェンスすることだったのような」
祐希「なら、かっきーが上手いってことなんだ!すごーい!」
梅澤「そんな呑気なことじゃないような…」
梅澤さんが言ってた通り、遥香はボールを奪われて失点してしまう。
遥香は悔しそうな表情を見せるが、みんなに励まされて笑顔になる。
その後、遥香は封じられていたものの、他のメンバーが頑張り、1点差で終盤に入る。
秋元「残り30秒!!頑張れー!!」
応援しているメンバーも大声で応援する。
そして、相手からボールを奪って最後の攻撃に入る。
相手チームはゴールを奪われないように、死ぬ物狂いでディフェンスをしている。
早川「さくちゃん、お願い!!」
残り10秒。ゴール下で早川さんがさくらにボールを預けた。
しかし、激しいディフェンスでシュートを打つことが出来ない。
和也「さくら!右斜め!!!」
和也が叫ぶと、さくらは右斜めにパスをした。
そこにはフリーで待っていた遥香が。
遥香「私、この角度からのシュートは得意なんです!ここなら外す気がしません!」
遥香と公園で練習した時の言葉がよみがえる。
ボールを受け取った遥香は綺麗なフォームでシュートする。
『ピッピー』ボールを離した瞬間に終了の笛が鳴る。
『パサァ』ボールは綺麗にネットをくぐり抜けた。
秋元「どっち?決まったのかな?」
体育館が静まり返った。審判に目線が集まる。
そして、審判が得点のジェスチャーをした。
その瞬間、『うわぁーー!!』今日、1番の盛り上がりが起きる。
美月「やったぁ〜!!遥香ちゃんすごーい!!」
桃子「うえーん!感動して泣けてきたぁ〜!」
メンバーも1年生の勝利を喜び、さくら達も抱き合って喜んでいた。
早川「かっきー!!やったぁ〜!」
柴田「勝った!勝ったよぉ〜!」
金川「ブザービートとかカッコ良すぎ!」
遥香「さくちゃん、ナイスパス!!」
早川「ほんまやなぁ!さくちゃん、凄かったで!」
さくら「えへへっ、兄ちゃんのおかげかな!」
遥香「和也くんの?確かにさくちゃんがパスする前に、和也くんの声が聞こえたけど」
金川「でも、そんなに早く対応出来ないよ?」
さくら「それもあるけど、昨日の夜に兄ちゃんからアドバイスもらったんだぁ!「もし、困った時があったらさ、右斜め見てごらん?そこに絶対遥香がいるから」って」
遥香「和也くんがそんなことを…。それに覚えててくれたんだ」
さくらの言葉を聞いて、涙が溢れてくる遥香。
早川「かっきー泣かないでよぉ!こっちまで泣けてきちゃう〜」
そして、最後の整列が終わり、メンバーがみんなの元に向かう。
すると、遥香が和也の元に駆け寄った。
和也「遥香、おめでとう!うわぁ!」
遥香は和也に抱きついた。
遥香「和也くん、ありがとう。覚えててくれてありがと…」
遥香は泣きながらお礼を言った。
和也「遥香、よく頑張ったね」
和也は遥香の頭を撫でた。
しかし、『あーっ!!!』こんな感動的なシーンもそう長くは続かないのがお約束。
飛鳥「和!!!何してるんだぁ!」
美月「そうだぁ!!遥香ちゃんに抱きつくなんて何を考えてるんだ!!」
和也「いや、これは俺からじゃなくて…」
祐希「うるさーい!!和くん、ここ座りなさい!!」
桃子「和くん!桃子、今、怒ってるからね!」
史緒里「かっきーのせいにするなんてひどい!!」
生田「なんか面白そぉ〜!私も行く〜!」
新内「いくちゃん、なんか楽しんでるよ」
和也は体育館の隅で正座をさせられて、みんなから怒られた。
遥香「あははっ、なんか悪いことしちゃったかな?」
さくら「でも、みんな笑顔だからいいんじゃない?」
さくらの言う通り、怒ってる人と和也以外はみんな笑顔だった。
そして、次はバトミントン決勝が始まる。

しゃもじ ( 2021/09/24(金) 12:35 )