乃木坂高校












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第2章
和也の秘策
『パァーン!!』和也の投げたボールがキャッチャーミットに収まる。
「ス、ストライーク」静まり返ったグラウンドに審判の声が響き渡る。
「マジかよ」
「速すぎたろ」
「あんなの打てるわけねーよ」
そして、グラウンドが騒めきだした。
和也はこの回、三者連続三振でノーアウト満塁のピンチを切り抜けた。

ベンチに戻るとキャプテンに声をかけられる。
キャプテン「遠藤、こんなにすごいのになんで黙ってたんだ?」
和也「えっ?聞かれなかったので」
拍子抜けするキャプテン。和也は呑気にドリンクを飲んでいた。
田村「さくちゃんのお兄ちゃんって、なんだか天然だね…」
さくら「うん…。ちょっと恥ずかしい…」
美月「和くんいいぞぉ〜!面白い!」
和也はこの回、2回目の打席に立つ。
美月「桃子、なんで相手の取る人が立ってるの?」
桃子「あれは敬遠っていうんだよ!すごいバッターと勝負をしない様にするんだ!」
与田「なら、遠藤くんはすごいバッターなんだぁ!わーい!」
久保「そんな呑気なことじゃないんだけどなぁ〜」
梅澤「久保、どういうこと?」
久保「確かに塁には出れるんだけどね、遠藤くんが打てないって事は、遠藤くん以外の人が打たないと点が取れないの」
秋元「でも、さっき他の人もヒット打ってたから大丈夫だよ!」
キャプテン「あれは打ってたんじゃなくて、打たせてもらってたんだ」
生田「えっ?どういうこと?」
キャプテン「そのまんまの意味さ。さっきまでは本気じゃなかったって事」
キャプテンが言った通り、和也の後の打者が全員アウトになった。

その後、両校得点が入らない均衡した展開になる。
和也は第一打席以降、ずっと敬遠されていた。そんな展開に痺れを切らしたのか、和也が動き出した。
今回も敬遠されて塁にでた。そして、相手ピッチャーが投げる瞬間に走り出した。
久保「盗塁!?」
美月「おぉ〜!和くん、足速いなぁ〜」
キャプテン「監督、盗塁の指示出したんですか?」
監督「出すわけなかろう!あいつ暴走しおって」
筒井「久保さん、先輩は走っちゃいけなかったんですか?」
久保「走っちゃいけない事はないんだけど、ピッチャーはあんまり走らないかな?」
遥香「どうしてですか?」
久保「全力疾走って足にくるのよ。だから、次の回のピッチングに影響が出ちゃうのよ」
桃子「あっ!また走った!」
和也は2塁だけではなく、3塁まで狙った。
「せ、セーフ」塁審がセーフの判定をする。
キャプテン「ワンアウト3塁。監督!」
監督「あぁ。そうだな」
監督がバッターにサインを出す。
そのサインはスクイズ。このチャンスで確実に1点を取りに行く作戦だ。
しかし、和也が盗塁しているうちに、2ストライクになっている。
スリーバント失敗は避けたい状況だったが、『カンッ』緊張からかバントしたボールは無常にもラインを割った。
『アウトッ!!』審判がコールをする。
その後のバッターも内野ゴロに倒れて、結局点が入らないまま終わった。
和也はベンチに戻って守備に着く準備をする。
さくら「兄ちゃん大丈夫?汗すごいよ?」
さくらが心配そうに声をかける。
和也「んっ?大丈夫、今日はちょっと暑いからね」
和也は笑顔を見せたが顔は少し辛そうだった。
そして、試合は終盤を迎えた。

しゃもじ ( 2021/09/06(月) 10:39 )