乃木坂高校












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第2章
遥香の過去
和也「賀喜さん、どうしたの?」
賀喜「あの、さくちゃんが寝ちゃって、まだ眠たくなかったので、お兄さんが起きてるなら、お話ししようかなと思いまして」
和也「そうなんだね。うん、まだ寝れないし話そっか。部屋に入って」
賀喜「ありがとうございます!お邪魔します」
部屋に入ったが、賀喜さんは立ったままだ。
和也「好きな所に座っていいよ」
賀喜「あっ、すみません。なら、ここに」
「……。」無言の時間が過ぎる。
和也「賀喜さんさ…。」
賀喜「は、はい!」
和也「あははっ、そんなに緊張してるんだ」
賀喜「えっ、男の人のお部屋に入ったが初めてで…。」
和也「そんなに緊張しなくていいよ。それに朝もはいったじゃん」
賀喜「そうなんですけど、朝と夜じゃ違うというか〜」
和也「何が違うの?」
賀喜「いえ、なんでもないです。それでなんでしたか?」
和也「そうだ。賀喜さんは美月に憧れてからこの学校に入ったの?」
賀喜「山下さんに憧れてたのもあるんですけど、私、小学校と中学校の時にいじめられてたんです」
和也は予想してなかった内容にびっくりする。
賀喜「中学の時は部活内に友達がいたので、学校に行けてたんですけど、小学校の時は少し不登校で。そんな自分を変えたくて、強くなりたくてこの学校に来たんです」
和也「そうだったんだ。なんかごめんね」
賀喜「大丈夫です。でも、強くなりたかったんですけど、クラスの子も先輩も可愛くて。私なんて声も低いし、肩幅狭いし」
和也「全部気にすることないと思うけどな」
賀喜「それにスカウトもされたことなくて」
和也「スカウト??」
賀喜「はい。同じクラスのやんちゃん、金川沙耶ちゃんは何回もスカウトされたことあるのに、私は一度もないんです」
和也「そうなんだ。金川さんはすごいな」
賀喜「すみません。こんな話しちゃって」
和也「ううん。なんかあったらいつでも言っておいで?それに、賀喜さんなら大丈夫だよ。変なことに拘らないで、自分らしくいればいいんだよ」
賀喜「自分らしくですか?」
和也「そう。人見知りなさくらが1週間も経たない内に、友達ができるなんて思ってなかったよ。それは賀喜さんの人柄がいいからじゃないかな?だから、そのままの賀喜さんでいいと思うよ」
賀喜「そのままの私…。ぐずん」
賀喜さんが急に泣き始める。
和也「えっ、ごめん。何も知らないのに勝手なことばかり言って」
賀喜「いえ、嬉しくて。そんな言葉を言ってくれる人今までいなかったから」
和也「びっくりした。悲しいからじゃないんだ」
賀喜「また、何かあったら話し聞いてもらってもいいですか?」
和也「うん。いつでも言っておいで」
和也は賀喜の頭を撫でた。
しばらくすると賀喜さんは泣き止んだ。
賀喜「ねぇ、お兄さん。お願いがあるんです」
和也「どうした?」
賀喜「私のこと呼ぶとき、賀喜じゃない呼び方がいいです」
和也「賀喜じゃない呼び方?かっきーとか?」
賀喜「……。」
何故か賀喜さんは無言のまま顔を下げている。
和也「かっきー?」
賀喜「ちょっと待ってください!恥ずかしいです!」
和也「あははっ、自分から言ってきたのに?」
賀喜「そうですけど、次、違うのお願いします」
和也「違うの?んーっ、遥香とか?」
賀喜さんはまた頭を下げる。今度は先程間違い、何故か耳が赤くなっている。
和也「大丈夫?」
賀喜「待って!今、顔がすごく赤くなってると思います!見ないでください」
何故顔が赤くなるのか分からないが、たぶんこの呼び方がいいのだろうと思った。
和也「遥香にしよっか?」
賀喜さんは凄い勢いで頷いた。
和也「決定だね。なら、俺はどうしようか?お兄さんだとなんか変だし」
遥香「和也君でもいいですか?」
遥香が小さな声でつぶやいた。
和也「うん。いいよ!そっちの方が距離感ないし」
そして、眠たくなるまで2人で話す。
遥香「明日もあるし、もうそろそろ寝ます」
和也「そうだね。早く起きないとさくらに怒られるしね」
遥香は立ち上がってドアに向かう。和也も見送るために後ろをついて行く。
遥香「ねぇ、和也君」
遥香が急に振り返る。
和也「んっ?どうした……」
唇に柔らかいものが触れた。
遥香「私のファーストキスです」
遥香はそう言って部屋を出ていった。
そして、しばらく和也はその場に立ち尽くしたままだった。

しゃもじ ( 2021/08/23(月) 16:29 )