乃木坂高校












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第9章
鈍感と成長
和也は家に帰ると、さくらがウトウトしながらソファに座っていた。

和也「さくら?寝るなら部屋に行きな?」
さくら「あっ、兄ちゃん。おかえりなさい」
さくらは目をこすりながら立ち上がる。
そして、和也にギュッと抱きついた。

和也「どうした?」
さくら「兄ちゃんのこと待ってた。明日、10時に駅に待ち合わせね?」
和也「駅で待ち合わせ?家から一緒に行こうよ?」
さくら「待ち合わせの方がデートっぽいもん。それじゃ、おやすみなさい」
さくらはそう言い残し、自分の部屋に戻っていった。

和也「あんまり変わらないと思うけどなー」
和也はさくらの言っていることがいまいち理解出来ていなかった。

その後、お風呂に入って眠りについた。

翌日。和也が目を覚まして、リビングに行くとさくらがいなかった。
和也「母さん、さくらは?」
母「さくらなら出かけたわよ?なんか、凄くオシャレしてニコニコしてたけど、誰かとデートかしら?」
『ブブッ』和也は眠気覚ましに飲んでいたコーヒーを吐き出しそうになる。

母「そんな動揺しなくてもいいじゃない!さくらも高校生なんだから、恋愛の一つや二つするわよ?」
和也「そ、そんなもんなのかな?」
母「そんなもんよ。それより、和也が早く起きてきたってことは、お出かけするんじゃないの?」
和也「あっ、そうだった。準備しなきゃ」

飲んでいたコーヒーを一気に飲み干して、部屋に戻って準備した。
そして、準備が終わり駅に向かった。

(さくらはどこかな?)駅に着いて、周りを見渡す。
すると、白の膝上ぐらいのパンツに、水色のノースリーブの服を着ているさくらが木陰の下で立っていた。

和也がさくらの元に向かうと、さくらも和也に気づいた。
さくら「あっ、にい、和くん!」
さくらは笑顔で小さく手を振った。

(確かにデートっぽいかも…)
昨日のさくらの発言にピンっとこなかったが、いざ待ち合わせして合うと、兄妹でもデートっぽく新鮮に感じる。
周りからみたら、兄妹ではなくカップルが待ち合わせしてる様に見えるだろう。

和也「お待たせ。それより、さくらに和くんって呼ばれたのいつぶりだろうね?」
さくら「さくがまだ小さい頃は和くんだったもんね?」
和也「そうだね。てか、なんで和くんなの?」
さくら「兄ちゃんって言うより、和くんの方がデートっぽいから」
和也「そっか。それじゃ、いこっか?」
さくら「待って!今日のさくを見て何か気づかない?」
和也「今日のさくら?んーっ、なんだろう?」
和也は顎に手を当てて考え込む。

和也「あっ!もしかして!」
さくら「えっ!わかった?」
さくらは期待した目で和也を見る。

和也「その服、新しく買ったでしょ?」
ウキウキして待っていたさくらの表紙が一気に変わり、目を細めた冷たい目線で和也をみる。

和也「あれ?違った?」
「うん」と頷き、さくらはジーッと和也を見つめる。

さくら「わかんない?」
見つめながら少しずつ顔を近づけると、2人の顔の距離は数センチほどになる。

和也「さくら…近いよ?みんな見てるよ?」
さくら「いいもん。和くんが気づいてくれるなら」
和也「気づくって言っても…んっ?さくらのいつもと顔が違うような…」
さくら「何が違うの?」
和也「えーっと、化粧してる…?」
さくら「うんっ!そうなんだぁ!」
さくらの顔が離れていき、満面の笑みをしている。

さくら「あすぴーさんにお化粧の仕方教えてもらったんだぁ!どうかな?」
高校生ということもあって、普段は化粧を全くしない。
元々、少し童顔で可愛い顔をしているさくらだったが、化粧をすることで少し大人っぽく見える。

和也「飛鳥さんか。うん。いいと思うよ?大人っぽく見える」
さくら「ほんと?やったっ!」
目を細めて喜び、和也の手を握るさくら。

さくら「もっと早く気づいて欲しかったなー!」
和也「ごめん。今度から気をつけるよ」
さくら「でも、鈍感な和くんが気づいてくれて嬉しかった!あっ、もうすぐ電車来ちゃう!」
さくらは和也の手を引いて歩き出した。

和也はこの時、妹の成長を感じるのであった。

しゃもじ ( 2022/03/26(土) 12:16 )