乃木坂高校












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第9章
遠回りの帰り道
ライブが終わり、シャワーや着替えをする為に、一旦家に帰ることになった。

さくら「兄ちゃん、手繋いでもいい?」
帰り道、照れ臭そうにさくらが言う。
和也「うん、いいよ」
和也はさくらの手を握って歩き出す。

(さっきまではかっこよかったのに…。まだまだ甘えん坊だな)
和也はお兄ちゃん離れをしないさくらを見て、嬉しくなる。

さくら「んっ?人の顔見てどうしたの?」
和也「なんでもないよ。さくらはまだまだ子どもだな〜って思っただけ」
さくら「もうっ!!さくはもう大人なの!」
頬を膨らませて、睨んでくるが全く怖くない。むしろ、逆にそれも可愛いと思ってしまう。

和也「ふふっ、ごめんごめん。ねぇ、さくら?遠回りして帰る?」
さくら「えっ?いいの!?」
和也「集合時間まで余裕あるし、少しぐらいなら大丈夫だよ」
さくら「うんっ!えへへっ、やった!」
さくらは余程嬉しかったのか、握っていた手の力を強くした。

そして、2人はいつもと違う帰り道で、遠回りして帰った。

『ただいま』家に入り、リビングに行くと父と母がいた。
母「おかえりなさい!ライブ凄かったわね?」
父「さくら、カッコよかったぞ〜!」
父と母はライブを観に来てくれた。

さくら「そう…かな…?ちょっと恥ずかしいや」
母「和也もお疲れさま」
和也「うん。ほとんど何もしてないけどね」
父「そんなことないだろう?何かしたんじゃないか?」
和也「うーん…」
和也は今日1日のことを思い出した。
どんだけ思い出しても、最後にみんなとハグしたことしか思い出せない。

母「あら?本当に何もしてないの?」
和也「うーん、たぶん…」
さくら「そんなことないよ!兄ちゃんがいたからさくは頑張れたもん!みんなだってそうだよ?だから、最後、兄ちゃんにハ…うぅっ!」
和也はさくらの口を慌てて押さえた。
両親にみんなとハグをしたなんて聞かれたくないからだ。

父「和也、なにしてるんだ?」
和也「あ、あははっ!さくら、あんまり時間ないからシャワー浴びて、浴衣着させてもらいな?」
和也はさくらの背中を押して、お風呂場に向かわせた。

和也「さくら!シーッ!みんなとハグしたなんて言ったらダメだから!」
さくら「えーっ?ダメなの?みんな嬉しそうだったのに!」
和也「ダメだって!流石に恥ずかしいから」
さくら「そうなの?変なのー!まぁ、いいや!お風呂入るね」
和也「ちょ!さくら!」
さくらは和也が居るのにも関わらず、服を脱ごうとするので、慌ててお風呂場から出て行った。

和也「ふーっ、どんだけ天然なんだよ」
和也はさくらを天然と言っているが、自分も天然という事の自覚がなかった。

さくらがお風呂から出て、入れ替わりで和也もシャワーを浴びた。
汗を流して、リビングに戻ると、さくらが母にピンクの浴衣を着付けしてもらっていた。

さくら「兄ちゃん、どうかな?」
和也「うん。似合ってるよ」
さくら「可愛い?」
和也「うん。可愛い浴衣だね」
さくら「もぉ〜!浴衣じゃなくってさー!」
母「こらっ、さくら動かないの!着付けできないじゃない!」
さくら「はーい…」
さくらは納得しない顔をして返事をした。

母「はい、出来上がり!」
着付けが終わり、浴衣姿になったさくら。
さくら「うーん、ちょっと苦しい…」
母「我慢しなさい。なら、次は和也ね」
和也「俺?俺は普段着で行くからいいよ」
さくら「えぇー!兄ちゃんも浴衣着ようよー!」
和也「だって、浴衣って歩きづらいし」
母「いいから文句言ってないでこっち来なさい」
強制的に浴衣の着付けをされていく和也。

さくら「うわぁ!カッコいいー!」
黒の浴衣姿になった和也をさくらがスマホで写真を撮っている。
和也「いやいや、撮りすぎだから」
かなりの枚数を撮っているさくらを見て、和也は少し呆れている。

母「うん、中々ね。そうだ。写真撮ってあげるから、そこに並びなさい」
さくら「ほんと?あっ!さく、外で撮りたい!」
母「確かにお家の中だと少し寂しいわね」
和也「どこでも変わらないような…」
さくら「いいの!兄ちゃん、早く!」
さくらに引っ張られて外に出た和也。

母「撮るわよ〜?はい、チーズ!」
『カシャ』カメラで撮ってもらった2人のツーショット。
さくら「ママー!さくのスマホでも撮って!」
さくらは母にスマホを渡した。

母「いくわよ?はい、チーズ。あら、仲のいいこと」
母が写真を確認すると、さくらが和也に寄り添って、腕を掴んでいた。

さくら「ママ!ありがとう!」
さくらも写真を確認すると、満足そうにしていた。

和也「ん?やば!もうこんなじかんじゃん!さくら、行くよ?」
自分のスマホで時間を確認すると、集合時間まで20分前だった。

さくら「えっ!ちょっと待って!」
さくらはスマホを操作して、中々動かない。

さくら「よしっ、出来た!」
和也「何が出来たの?」
さくら「なんもなーい!やばい、急がなきゃ!」
母「気をつけて行くのよー!」
さくら「はーい!」
和也とさくらは集合場所に向かった。
さくらは母が見えなくなった所で、再び和也の手を握ったのだった。

しゃもじ ( 2022/03/12(土) 17:35 )