日向高校




























小説トップ
第26章
師匠と弟子
和也「落ち着いたかな?」
対面に座る陽菜。和也は陽菜に話しかけながら自分の気持ちも落ち着かせる。

陽菜「無理です無理です。恥ずかしいです!」
陽菜は手を横に振り、お湯が『バシャバシャ』とはねる。
和也「あの〜、めっちゃかかってます」
和也の顔はお湯でびしょ濡れになった。

陽菜「あっ!ごめんなさい!」
陽菜が顔を近づけ、手で目についたお湯を拭ってくれる。
陽菜「もう大丈夫です!ごめんなさい!」
和也が目を開けると、至近距離で陽菜と目が合った。
2人は時が止まったかの様に見つめ合う。

陽菜「あっ…」
我に返った陽菜が和也から離れて、距離をとった。
和也「あ、ありがとう。身体洗うね」
和也は湯船から出て、バスチェアに座った。
陽菜は湯船に口をつけて、『ブクブクブク』としている。
そんな陽菜を見て和也は微笑み身体を洗った。

身体を洗い終わり、再び湯船につかる。
和也「そろそろでる?」
陽菜「はい!でももう少しだけいたいです」
陽菜はそう言って、和也の間に入ってきて、ピタッと背中を和也の胸に近づける。
和也が後ろで陽菜が前のバックハグ状態になる。

和也「急にどうした?」
陽菜「あの…和くんに近づきたくなっちゃった…」
陽菜の顔が真っ赤になっている。
後ろからでも耳が赤くなっていたので分かった。
和也「そっか」
和也は無意識に腕を陽菜の胸周りに回した。

陽菜「あっ…」
陽菜の身体が驚いた様に『ビクンッ』と反応する。
和也「あっ!ごめん!」
和也は陽菜が全裸だった事を忘れていた。
そして、慌てて腕を元に戻す。

陽菜「ううん、大丈夫だよ。もう一回…して…?」
和也「いいの?」
陽菜「うん。それで、ギュッてしてください…」
恥ずかしい気持ちを一生懸命我慢して、精一杯気持ちを伝える。
「うん」和也は返事をして、陽菜の身体を優しく抱き寄せた。

陽菜「幸せです…」
陽菜はそう小さく呟いた。
和也「陽菜、この1年ですごく成長したね?」
陽菜「えっ…でも、確かに昔の下着がキツく…」
和也「ごめん…そっちのことじゃないんだけど…」
陽菜は振り返り、頬を膨らませて和也を睨む。

和也「ごめんごめん。人間的にってこと」
陽菜「人間的に…?」
和也「うん。昔、陽菜が自分の気持ちを上手に表現出来なくて悩んでたでしょ?前も言ったと思うけど、今は自分の気持ちを素直に伝えているよね?だから、成長したなって。大人になったね?」
和也は陽菜の成長を実感していた。
語彙力がなくて、上手く気持ちが伝えれなかった頃と比べると、今は恥ずかしがりながらも伝えていた。

陽菜「そうだね。自分でもびっくりするぐらいです。こうやって、和くんとお風呂に入っているのも、近くに近づくことも昔だったら考えられなかったです」
陽菜は前を向いて話し出す。

陽菜「前に和くんが褒めてくれて、もっと頑張ろうと思えたんです。和くんに褒められたくて、大人の女性になりたかったんだ!」
和也「そっか。立派な大人の女性になったね?」
陽菜「うんっ!和くんが弟子にしてくれたおかげだね!」
陽菜は振り向いて、目を細めてニコッと笑った。

陽菜「これからも陽菜のそばにいてくださいね?」
陽菜は『チュッ』と和也の唇にキスをした。

和也「もちろんだよ。そろそろ出よっか?」
「はいっ!」
陽菜はそう言って立ち上がった。

和也「……。」
陽菜「……。」
和也の視界に再び陽菜の身体が。

「きゃー!!!」お風呂場に陽菜の叫び声が響き渡るのであった。

しゃもじ ( 2022/04/24(日) 19:00 )