日向高校




























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第26章
それぞれのバレンタイン
下駄箱の中から大量の箱が落ちてくる。
菜緒と史帆は、そんな状況を冷たい目線で黙って見ている。

和也「あははっ、これなんだろうね」
和也には笑って誤魔化すしかなかった。

すると、「先輩!!」と後輩の女の子の声をかけられる。
和也「キミは確かこの前…」
後輩「覚えててくれたんですね!嬉しい!あの…よかったらこれ貰ってください!」
女の子は紙袋を和也に差し出す。

後輩「チョコとクッキー、どちらも好きって言ってたので、チョコレートクッキーにしました!」
和也「あ、ありがとう…」
後輩「はい!それじゃ、失礼します!」
女の子は小走りで立ち去っていった。

和也はその子とのやり取りを終えると、再び、恐る恐る菜緒と史帆の方を向く。
2人はさっきの冷たい目とは違い、かなり怒っている目をしている。

菜緒「さっきのなに?」
和也「チョコレートクッキーみたい…」
史帆「そうじゃなーい!!チョコとクッキーどちらも好きって言ってたって!いつの間にそんな関係に?」
和也「あれは登校してた時に突然話をかけられて…」
菜緒「ふーん」
菜緒は明らかに納得してない表情をしている。
そして史帆はと言うと…。
史帆「和くんのおたんこなす!!」
そう言って大きな足音をたてながらその場を去っていった。

和也「史帆??あっ、これ拾わなきゃ」
和也は床に落ちた箱を拾っていく。
すると、顔もしゃがみ込んだ。
和也「菜緒…」
和也「ありがとう。優しいね」
菜緒が一緒に集めてくれると思い、お礼を言った。

菜緒「和くん…」
菜緒は顔を近づける。和也の鼻に菜緒のシャンプーの香りが広がる。
菜緒「これはしょうがないけど、浮気したら許さへんから」
そう耳元で呟いて、菜緒もその場から立ち去った。
和也は特に寒くもないのに、身体から震えていた。

そして、その後も教室に着くまで何人かにチョコを貰った。
教室に入る頃には鞄の中はもちろん、両手が塞がる程になっていた。

和也「おはよ…」
田中「おぉー和也!って、なんでそんなテンション低いん?」
和也「色々ありまして…」
田中「まぁ、大変だった訳だな」
何かを察したのか、同情した目で和也を見ていた。

そして、軽く話してから自分の席に着いた。
席に着くとある違和感に気づく。
(なんで机の中に入っているのが上にあるのだろう…)
机の中を覗くと、綺麗にラッピングされた箱が数個入っていた。

和也は慌てて周りを確認する。
和也「ふぅ…助かった…」
誰もいなかったので安堵な表情をして、机の中の物を取り出そうとすると、「何が助かったなの?」と後ろから声が聞こえる。

後ろを振り返ると、彩花と京子が立っていたのであった。

しゃもじ ( 2022/03/31(木) 22:01 )