日向高校




























小説トップ
第26章
バレンタインデー
翌日。和也はいつも通り目を覚まし、学校に行く準備を進める。
すると、『ピンポーン』とインターホンが鳴った。

和也「はーい!」
返事をして玄関に向かう。
(こんな朝早くに誰だろう?)
そんなことを思いながら玄関を開けると、そこには菜緒が立っていた。

和也「菜緒?こんな朝早くにどうしたの?」
菜緒「和くん、おはよ。寝癖すごいよ?」
菜緒は白い息を出しながら笑っている。

和也「とりあえず中に入って?」
菜緒「お邪魔しまーす」
和也は菜緒を家の中に入れた。

和也「それで?どうしたの?」
和也はカフェオレを温めて菜緒に渡す。

菜緒「ありがとう。和くんに渡したい物があったんだ」
カップを受け取り、通学鞄から何かを取り出す。

菜緒「happy Valentine!」
綺麗にラッピングされた箱を和也に差し出す。

和也「……。はぁっ!!」
和也は考え込んで、何かを思い出した。
和也「今日ってバレンタインだっけ!?」
菜緒「そうだよ?やっぱり忘れてたんや…」
菜緒は少し呆れた表情をしている。

和也「あっ!!だから、昨日みんな大変そうにしてたのか!」
昨日、アイドル部のメンバーが、いつも以上に男子に話しかけられてたのがやっと腑に落ちた。

菜緒「気づくの遅いねん!バレンタイン当日は和くんに1番に渡したかったの。だから、お家まで来ちゃった」
菜緒は舌をペロッと出して微笑んだ。

和也「ありがとう。嬉しいよ」
和也は菜緒から箱を受け取った。
和也「食べていいかな?」
菜緒「うんっ!菜緒の特製チョコやからね?」
ラッピングを綺麗に剥がし、蓋を開ける。
中にはハート型のチョコに、チョコペンで文字が書いてあった。

和也「大好き…」
チョコに書いてあった文字を読み上げると、菜緒が顔を真っ赤にして慌て出す。

菜緒「ちょっと!声に出して読まんくてもええやん!恥ずかしいやんか」
菜緒は真っ赤になった顔を隠すため、後ろを向いてモジモジする。

和也「ふふっ、食べてもいいかな?」
菜緒「菜緒が食べさせたるわ!」
菜緒がハート型のチョコを持って、和也の口元に近づける。
菜緒「あーん!」

和也「んっ!うまい!!」
一口かじり、口の中がチョコの甘い味が広がっていく。
菜緒「ほんま?やったぁ〜!」
無邪気な笑顔で喜んでいる菜緒。

和也「ごちそうさま。美味しかった」
菜緒「へへっ、大成功やね!男の子にチョコあげるの初めてやから、ずっと練習してたの。だから、中々和くんのお家にこれなかったんだ」
少し前に忙しそうにしていたのは、チョコを作る練習をしていたからみたいだ。

菜緒が一生懸命作ってくれた事が嬉しくて、和也は菜緒に抱きついた。

和也「菜緒、ありがとうね?」
菜緒「ううん。和くんが喜んでくれて嬉しかったよ?」
菜緒も和也の背中に手を回して抱き寄せた。

その後、学校に行く準備をして、菜緒と一緒に登校する。
そして、学校に着いて、下駄箱を開けようとすると、和也は何か嫌な予感がした。
人間と言うのは不思議なもので、急に第六感が働く。

菜緒「どうしたん?」
菜緒は怪しんだ目で和也を見る。
和也「な、なんでもないよ。菜緒、先に行ってて?」
菜緒「何でなん?途中まで一緒に行こ?」
和也「いや、ちょっと…」
菜緒「早く下駄箱開ければ?」
菜緒は薄々感じ取っている。和也の下駄箱の中がどうなっているか。

和也は覚悟を決めて、下駄箱を開けようとした時、「和くーん!!」と史帆が登校して来た。

声をかけられたと同時に下駄箱を開けた。
『バサッバサッバサッ』下駄箱から流れて落ちた大量のラッピングされた箱。

和也「………。」
和也が恐る恐る菜緒と史帆を見ると、2人は冷たい目をして和也を見ていた。

しゃもじ ( 2022/03/30(水) 21:42 )