日向高校




























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第26章
女神とお茶目
和也は家に帰ってくると掃除を始めた。
白石に料理を作ってもらうのは申し訳ないと思いながらも、白石は料理が上手なので少し楽しみにしていた。

一通り掃除が終わり、お風呂に入ってリビングに戻ると、タイミングよくインターホンが鳴った。

「はーい」玄関のドアを開けると、両手にビニール袋を持った白石が立っていた。

白石「お待たせ!」
白い歯を輝かせて笑う白石。
そんな白石を見てドキドキしてしまう。

白石「さーむい!中入ってもいい?」
和也「あっ、どうぞ」
白石「おじゃましまーす」
白石を家の中に入れて、リビングに向かう。

白石「お家の中は綺麗なのね?」 
ダイニングテーブルに荷物を置いて、辺りを見渡す。
和也「掃除は毎日してるんで」
白石「そうかそうか。えらいぞーっ!」
白石は無邪気な笑顔で和也の頭を撫でる。

白石「さてと、なら夜ご飯でも作りましょうかね〜!冷蔵庫開けるわね」
和也「あっ、俺も手伝いますよ?」
白石「いいからいいから。キミは今日出した宿題でもやってなさい?」
そう言って、白石は荷物を持って台所に向かった。

白石「えぇーっ!」
和也が宿題をする為に準備していると、台所から白石の大きな声が聞こえた。

和也「先生!どうしました?」
白石「どうしたのって、冷蔵庫の中が空っぽなんだけど!」
和也「あーっ、そういえば、今日の朝ごはん作ったら全部空になりましたね」
白石「はぁーっ。キミは本当に自分の為には何もしないのね。食材多く買ってきてよかった…」
白石は大きなため息をついて、少し呆れた表情をしている。

和也「あっ!お金。いくらでした?」
白石「お金なんていいわよ!社会人が学生からもらえない」
和也「でも、こんなにたくさん…」
白石「気にしないの!その代わり、これからも私のために働いてもらうわよー?」
和也「ははっ、頑張ります」
和也は白石の優しさに甘えることにした。
白石も中々の頑固者なので、一度言ったら基本的には言葉を曲げたりしない。
なので、和也がいくら言っても結果は変わらないと思ったからだ。

買ってきた食材を冷蔵庫にしたい、白石は調理を始めた。

宿題が終わると、白石の鼻歌と共に料理のいい匂いが家の中に広がる。
和也「めっちゃいい匂いしますね!」
白石「おっ?宿題終わった?」
和也「おかげさまで終わりました」
白石「よろしい!もうすぐ出来るから、待っててね〜?」

和也が今まで出会った人の中で、1番の美人で女神の様な白石が家の中にいて、料理を作ってくれている。
いまだにこの状況になれないので、和也らずっとソワソワしている。
しかも、今日はみんなが居るわけでもなく、先生と2人っきりだ。
もちろん、生徒と先生の関係なので何かが起きるわけではない。
いくら鈍感な和也でさえ、この状況で意識しないことは不可能であった。

白石「人の顔ボーッと見てどうしたの?」
和也は無意識に白石を見ていた。
和也「い、いえ。何でもないです!」
慌てて目を逸らして、ダイニングテーブルに座った。

白石「うんっ!完璧!」
出来上がった料理の味見をして、お皿に盛り付けされた料理がテーブルに並ぶ。

和也「すごっ…」
テーブルに並べられた豚の角煮やポテトサラダ。何より、豚汁がごま油の凄くいい匂いがしている。

白石「いっぱい食べてね〜!」
ご飯を茶碗によそって、和也の対面に座る白石。

和也「いただきます!!」
角煮を一口食べると、あの短い時間で作ったとは思えないほど柔らかく、口の中でホロホロと崩れる。

和也「うまっ!!」
思わず大きな声を出してしまう。
そして、炊き立ての白米を口の中にいっぱいに入れ込む。

和也「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ」
白石「たくさん入れすぎだって!大丈夫?」
和也の前にお茶を置いてくれる。
和也「ゴクッ、ゴクッ。はーっ、死ぬかと思った!」
白石「あははっ、誰も取らないからゆっくり食べな?」
白石は普段見せない子供っぽい和也を見て微笑んでいた。

白石「よしっ、私も食べようかな!」
白石は少しの間、和也が食べているところを見守って、ご飯を食べ始めた。

白石「おいしい〜!!」
角煮を食べると、足をパタパタさせて幸せそうな表情をする。
そして、大きな口で白米を頬張った。
白石は美人なのにお茶目な一面もあり、本当に完璧な女性だった。

和也はそんな白石との時間を思う存分満喫したのであった。

しゃもじ ( 2022/03/27(日) 18:59 )