日向高校




























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第23章
あの時の優しさ
練習試合まで残り1週間になる。
サッカー部の部活は、試合形式の練習が中心になっていたが、人数が少ないので、ミニゲームしか出来なかった。
和也「ふーっ、いててっ」
試合中、DFにスライディングされ、足を擦りむいた。
後輩「あの、すみません。大丈夫ですか?」
試合の時にスライディングをした後輩が話をかけてきた。
和也「うん、大丈夫だよ。いいディフェンスだったね!次は負けないから」
後輩「はい!自分も負けません!!」
後輩はお辞儀をして、走り去っていった。

「男の人にも優しいんやなぁ〜」
和也「菜緒。どうしたの?」
休憩していると、後ろから菜緒に話をかけられる。
菜緒「足。擦りむいているでしょ?早く見せて?」
菜緒は救急箱を片手にしゃがみこんだ。
和也「怪我したってよくわかったね?」
菜緒「和くんのことならわかってるよ」
和也「ふふっ、そっか」
菜緒「何笑ってるの?」
和也「あの時も菜緒が治療してくれたなぁって思って」
菜緒「あの時?」
和也「球技大会の時だよ。あの時も菜緒が、泣きながら救急箱を持ってきて、手当てしてくれたね」
菜緒「もう!泣きながらは余計だよ!それにあれは、和くんが心配かけるから!」
菜緒は頬を膨らませながら、擦りむいた所にアルコール消毒をかけてくれる。
和也「いつもありがとね?あと、これからもよろしくね?」
菜緒「これからって、怪我するのは程々にしてよね!はい、終わり!!」
和也「ありがとう。菜緒がいれば怪我も怖くないよ!」
菜緒「だから、怪我するのはあかんって言ってるやろ!」
和也は菜緒と少し話して、グラウンドに戻った。

部活が終わり家に帰ろうとすると、校門に未来虹が立っていた。
和也「未来虹、どうしたの?誰か待ってるの?」
未来虹「あっ、和也先輩!先輩のことを待ってたんです!」
和也「俺を?どうした?何か悩み事?」
未来虹「いえ、最近、和也先輩とあんまり話せていなかったので、話したいな〜って思いまして」
和也「そっか。最近、部活に出れてなかったもんね。寒い中待たせてごめんね?」
未来虹「いえ、私が勝手に待ってただけなので!」
未来虹は笑顔だったが、唇を震わせていた。
和也はマフラーを外して、未来虹の首に巻いた。
未来虹「これ…みーぱんさんが作ってくれたマフラーですよね…いいんですか?」
和也「うん。美玲もこの場所にいたら、貸してあげてっていうだろうし」
未来虹「和也先輩…ありがとうございます…」
和也「いえいえ。それじゃ帰ろっか?」
未来虹は「はい!」と返事をして歩き出した。

和也「最近の部活はどう?」
未来虹「みんな頑張ってますよ!でも、やっぱり和也先輩がいないのは寂しいです」
未来虹はそう言うと俯いた。
和也「あと1週間で戻ってくるからね」
未来虹「試合、絶対応援に行きますからね?」
和也「うん、ありがと。カッコ悪いとこ見せない様にしなきゃね?」
未来虹「いつもカッコいいから、カッコ悪い所もたまには見てみたいけどなぁ〜」
和也「あははっ、なにそれ!そもそも、カッコいいところなんて見せたことないよ」
未来虹「わかってないですね〜!さっきのことでも女の子はキュンとするんですよ〜?」
和也「さっきのこと?」
未来虹「もうっ!まぁ、和也先輩らしいですね!お家ここです!送ってくれて、ありがとうございました!」
未来虹の家の前に着くと、首に巻いているマフラーを取った。
未来虹「マフラーもありがとうございました!」
未来虹はマフラーを首に巻いてくれる。
その時、2人の顔の距離は近く、自然と目があった。
未来虹「……。」
和也「……。」
無言で見つめ合う和也と未来虹。
すると、未来虹の顔が少し動いて、唇が触れた。
未来虹「それじゃ、また明日!」
未来虹は顔を赤くして、急いで家の中に入っていった。
和也の唇には、少し冷たい感触が残ったままだった。

■筆者メッセージ
日向坂後援会さん
いつもコメントありがとうございます!笑
またリクエストがありましたら、なるべく応えていくので、これからも宜しくお願いします!
しゃもじ ( 2021/11/26(金) 21:51 )