日向高校




























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第20章
追いつかない心
土曜日と日曜日は必要最低限の事しかやらなかった。というより出来なかった。
起きて、寝て、そしてお風呂に入り、また寝る。ご飯は喉通らなかったのであまり食べなかった。
何もする気力も起きず、スマホも電源をいれることがなかった。

そして、休み明けの月曜日。
和也「白石先生には今日伝えておくよ」
母「お母さんからも連絡はしておくからね。それより、大丈夫?ご飯も全く食べてないけど」
和也「大丈夫だよ。ご飯を食べてないのは母さんもでしょ?お昼はちゃんと食べなよ?それじゃ、行ってきます」
家を出て学校に向かう。
(あと2ヶ月しかないんだ。それまでに…)
学校に着くと、教室にはみんなが集まっていた。
和也「みんなおはよ。集まってどうしたの?」
美玲「あっ!!和君!連絡こないから心配してたんだよ!」
美玖「本当ですよ!メッセージも既読にならないし」
菜緒「もしかして、体調悪くなった?顔色も悪いし」
和也「ごめんね!ちょっと忙しかってさ。俺は全然元気だよ!」
史帆「ねぇ、無理してない?」
和也「してないよ。それより、白石先生に用事があるから行ってくるね」
和也はかばんを置いて、職員室に向かった。
和也「白石先生。おはようございます」
白石「佐藤君おはよ。どうしたの?」
和也「あのですね、父が…」
和也は父の転勤のことを先生に伝えた。
白石「えっ。嘘。それは本当なの?」
白石先生は信じられない様で、何度も確認してくる。
和也「はい。それで、みんなには今日の放課後に俺から伝えるので内緒にしててほしいです」
白石「ごめんね。ちょっと私も色々と追いつかない。とりあえずわかったわ」
和也「すみません。後で母から連絡が来ると思うので」
和也はそう伝えて職員室を出た。そして、教室には戻らず屋上に向かった。
今、みんなの顔を見ると涙が出そうになるからだ。
いつものお気に入りのベンチに座る。
和也「ここから見る景色もあと2ヶ月か」
しばらく屋上からの景色を見ていた。すると、「こんなところで何してるの?」後ろから声をかけられた。
和也「久美。どうしたの?」
和也は泣きそうになったが、必死で堪えて笑顔を作る。
久美「和也君が戻ってこなかったから探しにきた。それで、なんかあったんでしょ?」
和也「なにが?なにもないよ」
久美「ほんとに?なにもないの?」
和也「うん。ここに来たのも久しぶりに来たかったからなんだ」
久美「ふーん。ならいいけど。鈴ちゃんが少し気になることを言ってたから心配になっちゃって」
和也「鈴花が?何を言ってたの?」
久美「修学旅行の時に和也君の様子がおかしかったって」
和也「そう?いつもと変わらないよ。それより、そろそろ戻ろっか」
和也は屋上の出入り口に歩き出す。
久美「大丈夫だよね?何もないよね?」
和也は久美の問いかけに答えることをせず、屋上から校内に戻って行った。

何事もなかった様に教室に戻る。
紗理菜「久美に会えた?」
和也「うん。屋上まで来てくれたよ」
愛奈「佐藤君、先生と何話してたん?」
和也「ちょっとね。今日の部活の時間に話すよ」
優佳「なんか気になるなぁ〜」
白石「はい、席に着いて〜。HRはじめるよ!」
白石先生が教室に入ってきた。
男子生徒「先生〜!目が赤いけど大丈夫ですか?」
白石「えっ?あーっ、ちょっと目にゴミが入っちゃったのよ」
先生が泣いたのかもしれないと思うと、胸が痛くなる。
和也は授業中もボーッと過ごしており、休み時間になる度に、1人で居れる場所を見つけてはそこで過ごしていた。
そんないつもと違う和也の行動を見て、メンバーも徐々に不安になっていくのであった。

しゃもじ ( 2021/08/21(土) 22:14 )