日向高校




























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第20章
父からの報告
父「和也、お前はこの町が好きか?」
少しの間、車内は無言だったが父さんが急に質問をしてくる。
和也「うん、好きだよ。町も人も。でも、なんで急に?」
父「いや、ちょっと気になってな。そうか。やっぱりそうだよな」
和也「どうしたの?母さんが話したいことがあるって言ってたけど、そのことと関係がある?」
父「それは家に帰ってから話そうか」
再び無言になる車内。そして、家に帰ってきた。
和也「ただいま〜」
母「おかえりなさい。楽しかった?」
和也「うん、すごく楽しかったよ。これ、お土産」
母「そうなのね。ありがと」
和也「着替えてくるね」
和也は自分の部屋に行き、着替えをする。
しかし、手が震えてなかなか服のボタンが外れない。いつもと違う家の雰囲気。それが更に和也を不安にさせる。

着替えが終わりリビングに向かう。
和也「それで、話ってどうしたの?」
母「あのね、和也。落ち着いて聞いてね」
和也「なんか改まって話されると怖いな〜」
和也は不安を消し去ろうと明るい口調で話す。
母「あのね、うぅ…」
急に泣き出す母さん。
父「母さん、私から和也に話すよ。和也。父さんな転勤することになったんだ」
和也「転勤…?そ、そうなんだ。どこに?」
父「シンガポールだ。会社が新しい事業で海外進出をするんだ。そのプロジェクトに父さんも参加することになったんだ」
和也「シンガポール…」
目の前が真っ暗になった。ただでさえ転勤と聞いて、動揺しているのに転勤先が海外。
和也「い、いつから?」
父「新年には移動しないといけない」
和也「新年。あと、2ヶ月ちょっと…。いつまで?」
父「一応予定では2年と言うことになっている」
和也「2年って…。この家はどうするの?」
父「売りに出すか、帰ってきた時に住むかで悩んでいる」
和也「そうなんだ…」
父「和也、本当にすまない。お前がせっかく立ち直ったのに」
和也「ははっ、しょうがないよ。仕事だもん。ごめん、ちょっと疲れたからもう寝るね」
和也は自分の部屋に戻った。部屋の中に入ると涙が溢れてきた。
和也「なんで…なんでだよ…。みんなと離れたくないよ…」
すると、スマホにメッセージが届いた。
久美「みんなで撮った写真だよ〜!」
京子「いいねぇ〜!グループのアイコンにしようよ!」
彩花「それいいね〜!早速しちゃお!」
久美から送られてきた写真はみんなすごくいい笑顔だった。もちろん和也も。
しかし、今はその写真を見るのが辛かったのでスマホの電源を切り、布団の中に潜り込んだのであった。

しゃもじ ( 2021/08/21(土) 21:07 )