日向高校




























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第14章
日向のセンター
今日の部活が終わったらフォーメーションの発表をするが、和也は不安だった。菜緒をセンターに選んだが、他のメンバーは納得してくれるのか、菜緒も受け入れてくれるのか。部活の時間もずっと考えていた。
史帆「今日の和君何かに悩んでるよね」
美玲「うん。何かあったのかな?」
京子「また何か問題を抱えたとか?」
史帆「ちょっと聞いてくる!!」
史帆が和君の元に駆け寄る。
史帆「和君どうしたの?元気ないよ?」
和也「あっ、かとし。大丈夫だよ?元気だから!かとしは調子はどう?」
史帆「和君が元気なら元気だし、元気じゃないなら元気じゃない」
和也「ふふっ、なんだそれ。なら、俺は元気だからかとしも元気だね」
史帆は腑に落ちない顔で戻ってきた。
美玲「和君なんだって?」
史帆「元気だって言ってたけど、何か隠してる感じだった」
京子「部活が終わったらもう一回聞いてみよ」
『うん』2人は頷いて練習を再開した。
白石「大切な話があるから、みんな集まってくれる?」
休憩時間になって先生がみんなに声をかけた。『はい!』みんなが白石先生の周りに集まる。
白石「絵梨花が作ってくれた曲のフォーメーションを決めました。このフォーメーションを元に練習していきましょう」
みんなはざわざわし始めた。そして、美玲、史帆、京子は和也が悩んでいた理由を察した。
白石「それじゃ「キュン」のフォーメーションを発表していきます。三列目左から富田さん、濱岸さん・・・」
白石先生がフォーメーションを発表していく。そして遂に1列目の発表をする。
白石「1列目、左、美玲さん。右、河田さん。左2番目、齋藤さん、右2番目、加藤さん。そして、センター。小坂さん」
センターと聞いていた菜緒は固まっていた。そして、次に「ドレミソラシド」のフォーメーションを発表する。
白石「次に「ドレミソラシド」のフォーメーションを発表します。三列目左から、久美さん。潮さん・・・」
次の曲のフォーメーションを発表してる時も菜緒は固まったままだった。
白石「1列目。左、齋藤さん、右、加藤さん、左2番目、丹生さん、右2番目、河田さん。そして、センター。小坂さん」
二曲ともセンターは菜緒だった。すると、「私がセンターなんて無理です」
菜緒が泣きながら言った。
白石「どうして無理だと思うの?」
菜緒「だって、みーぱんさんや、史帆さんや、京子さんや先輩みんながいるのに、私なんて全然・・・」
白石「小坂さんがこう言ってるけど、みんなはどう思うかな?」
白石先生はみんなに聞いた。和也の不安はピークに達していた。2年生のみんなは納得いっていないかもしれない。もしかしたら1年生も。すると、美玲、かとし、京子が和也を見て優しく微笑んだ。
美玲「私は菜緒でいいと思います」
史帆「私もこしゃがいいと思う。てか、こしゃが1番合っていると思います」
京子「うん。こういうのは先輩、後輩関係ないよ?だから、菜緒ちゃんがセンターで私は文句ないよ!」
そして、他の2年生も話し出す。
久美「こさかなが頑張ってるのはみんな知ってるよ?だから、自信持っていいんだよ?」
潮「うん!菜緒ちゃんなら大丈夫だよ」
彩花「頼りないかもしれないけど、私達がこさかなを支えるから」
東村「うん!めい達が支える!」
高瀬「こさかなの事をみんな信じてるよ!」
2年生は誰一人嫌がる素振りもなく、今回のフォーメーションを受け入れてくれている。残るは1年生だ。1年生を見るとみんな泣いていた。
美玖「菜緒。菜緒は1人じゃないんだよ?」
愛萌「うん。私達がついてるんだから」
明里「菜緒が辛くなったら、絶対支えるから!」
鈴花「菜緒、一緒に頑張ろう」
好花「なんかあったらいつでも話聞くし、絶対助かるから!」
陽菜「菜緒が安心出来る様に、陽菜も頑張るから!」
ひより「ひよたんも。菜緒1人に無理はさせないからね!」
ひなの「菜緒さんは私の師匠です!だから、私はずっと菜緒さんについて行きます!」
そして、美穂が優しく菜緒を抱きしめた。
美穂「菜緒。大丈夫だよ。菜緒の事は私達が絶対守るから」
菜緒「みんな・・・ありがと・・・」
みんなが菜緒の周りに集まった。
白石「小坂さんどうかな?まだできないと思う?」
菜緒「いえ。私やります。頑張ります」
菜緒は強く決意した顔をしていた。
白石「よかった。それじゃ、そこで泣いている監督から一言」
和也はみんなが菜緒を受け入れて、支えてくれる姿を見て、さっきまで心配していた不安が無くなり、涙が溢れていた。
史帆「あー!和君泣いてる〜!」
美玲「和君って意外に泣き虫だよね!」
みんなは和也の姿を見て笑顔になっていた。
和也「うるさいなぁ〜。えーっと。フォーメーションはこれで決まったけど、俺からしたら、3列目も2列目も1列目も場所は関係なく、みんなが主役だと思うから。だから、1人1人自分の良さを出して生田さんが作ってくれた曲を最高のものにしようね!」
『はい!』みんなは大きく返事をした。
そして、残りの時間はパートごとで練習をした。部活が終わり、和也は菜緒を探していた。
和也「愛萌。菜緒見なかった?」
愛萌「菜緒ならさっき部室から出て行きましたよ?」
和也「そっか。ありがと」
和也は菜緒が居る場所は検討がついていた。和也は菜緒を見つけて隣に座った。菜緒は目をつぶって何かを聞いていた。
菜緒「和君。生田さんの曲、本当にいい曲だよね」
和也「そうだね。てか、目をつぶってるのによく俺って分かったね」
菜緒「和君のことなら分かるよ。優しい匂いがしたから」
和也「優しい匂い?そんな匂いするかな?」
和也は自分の匂いを嗅ぎ始める。
菜緒「もう!そういうのいいから」
和也「えっ?どういうの?」
菜緒「まさか本気でやってたの?」
和也「うん。優しい匂いって気になるし」
「あははっ!!」菜緒は笑い出した。
和也「菜緒、いきなりどうしたの?」
菜緒「和君は本当に鈍感というか天然だね!」
そう言って菜緒は和也の肩に頭を乗せた。
菜緒「和君。菜緒頑張るね。だから、菜緒の事ずーーっと応援しててね?」
和也「ん?何いってるの?」
菜緒「えっ?応援してくれないの?」
菜緒は悲しそうな顔をした。
和也「いやいや。菜緒を応援してない時なんて一度もないよ?あの日この場所で菜緒のことを誘ってから、今日までずっと菜緒の事応援してるよ?菜緒が日向高校アイドル部にとって、絶対に大事な人になるって信じてたから」
菜緒「和君・・・。ありがとぉ〜」
菜緒はまた泣き出して和也に抱きついた。そして、和也も菜緒を抱きしめた。
史帆「今日だけ和君をこしゃだけに独占させてあげようかな」
久美「おっ!としちゃんも大人になったね〜!」
美玲「今日だけだから、また明日からは元に戻るんだよ!」
美穂「史帆さんが大人になった記念に、かき氷食べにいきましょ〜!」
史帆「美穂!絶対バカにしてるよぉ〜」
美穂「バカになんかしてませんよ〜!」
美穂は追いかけてくる史帆から逃げた。
美玖「先輩と菜緒にはメッセージ送っておきますね!」
久美「ありがと!それじゃ行こっか!」
みんなは和也と菜緒の姿を優しく見守り帰っていった。こうして、日向高校アイドル部は新たに一歩踏み出したのだった。そして、和也の日向町での初めての夏休みは終わった。

しゃもじ ( 2021/06/06(日) 15:55 )