日向高校




























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サイドストーリー
久美の誕生日
ある日の放課後、和也は校門で久美の事を待っていた。

久美「ごめん!お待たせ〜!」
久美が小走りで和也の元に駆け寄ってきた。
久美「先生のお話が長くてさ〜!」
和也「あの先生の話長いもんね。それじゃいこっか?」
2人は並んで歩き始めた。

久美「和也くんが帰りに誘ってくれるなんて珍しいね?」
和也「えっ、そうかな?」
久美「うん、いつも私達から誘ってるし」
和也「まぁ、たまにはね?」
久美「ふふっ、そっか。嬉しいなぁ〜」
久美はニコニコしながら横で歩いている。
その一方で和也は少し気難しそうな顔をしていた。
(どうやって渡そう…)ポケットの中にはあるチケットが2枚入っていた。

久美「和也くん、聞いてる?」
和也「あっ、ごめん。なんだっけ?」
久美「明日の朝、部室に寄りたいなら鍵貸してってことだよ!ちゃんと聞いててよね〜!」
和也「ごめん。はい!」
和也はポケットから部室の鍵を取ろうとしたら、「あっ!!」ポケットに入っていたチケットが地面に落ちた。

久美「んっ?何か落ちたよ?」
久美が落ちたチケットを拾った。
久美「あーっ!これーっ!!」
(最悪だ…)思わぬ展開で久美にチケットの事を知られてしまった。
久美「なんで和也くんがこのチケット持ってるの!?私なんて抽選で落ちたのに!」
久美が興奮した口調で話し出す。
それはそのはず。そのチケットは久美が好きな野球球団の感謝祭のチケットだからだ。

和也「それ、久美に渡そうと思ってさ」
久美「えっ!私に!?」
和也「久美、もうすぐ誕生日でしょ、だから、誕生日プレゼントにどうかなって」
久美「嬉しい!!」
久美はあまりの嬉しさのあまり和也に抱きついた。
和也「ちょっと久美!みんなが見てるって!」
下校している生徒が2人のことを見ている。
久美「大丈夫だって!みんな言うほど気にしてないから!」
久美の言う通り、アイドル部のメンバーが和也にくっつくのは日常茶飯なので、みんなは全く気にしていなかった。

久美「それでなんで2枚あるの?」
興奮状態から落ち着いた久美が話し始める。
和也「ペアチケットだからね。久美が行きたい人と言っておいで?」
久美「なるほど。なら、はい!」
久美が1枚のチケットを和也に差し出す。
久美「私は和也くんと行きたい!だから、一緒に行ってください!」
和也「えっ?」
久美「えっ!嫌なの!?」
和也「嫌じゃないよ!てっきり、史帆を誘うのかと」
久美「私は和也くんと行きたいな!どうかな?」
和也「ありがとう。よろしくお願いします」
そう言うと久美は笑顔で頷いた。

そして、迎えた当日。駅で久美を待っていると、「お待たせ!」と後ろから声をかけられる、
和也「久美、おは……よ…」
和也は久美の姿をみて驚いた表情をする。
久美が着ていたのは、今日、感謝祭に行くチームのユニホームで帽子まで被り、首にはタオルを巻いていた。

久美「和也くん、おはよ!今日はよろしくお願いします!」
久美は平然と挨拶をしている。
もしかしたら、これが普通なのかもしれないと思った。

和也「こちらこそよろしく。それじゃ、行こっか?」
電車に乗って、目的地を目指す。
電車に乗っている間、久美が選手の情報が載っている本を見せながら説明してくれた。

そして、電車を降りて目的地付近に近づくと、久美と同様ユニホームを着ている人達で溢れており、逆に私服でいる和也の方が目立っている。
和也「ねぇ、俺もユニホーム買いに行っていいかな?」
久美「うん!私もグッズ見たいしいこっ!」

2人はグッズ売り場に行き、久美の説明を受けながら、6番のユニホームを購入した。
久美「和也くん、運がいいなぁ〜!6番のユニホームは人気だからあまり手に入らないんだよ!」
和也「そうなんだ。そんなに人気なんだね」
久美「うん!すごい選手だからね!あっ、もう入場できるみたいだよ!いこっ!」
久美は和也の手を握って、入場口に向かった。

そして、感謝祭が始まると、横に座っている久美の興奮がMAXになっていた。
久美「見て見て!あの人!和也くんの買ったユニホームの人だよ!」
久美が楽しそうに話し出す。

久美「オオオ オオオ オオオ オオオ オー燃えろ!」
そして、応援歌らしき歌を歌っている。

その後、も久美は終始興奮しっぱなしで楽しんでいた。

久美「あーっ!楽しかったぁ!」
久美は叫びすぎて、少し声を枯らしていた。
久美「ちょっとお手洗い行ってくるね!」
久美がトイレに向かって、和也は近くで待っていると、「キャー!」と少し離れたところで盛り上がっている。
和也は近くに向かうと、選手達が出てきており、サイン会をしていた。
和也は急いで売店で色紙を買って、選手の元に近づいた。

そして、さっき久美が教えてくれた6番の人にサインを求めた。
しかし、あまりの人気ぶりで半ば諦めていたが、選手の人が色紙を掴んだ。
和也「あ、あの!久美へって書いてください!」
初めてみるプロ野球選手の前に緊張してしまう。
選手の人は笑顔で快くサインを書いてくれた。
和也「ありがとうございました!」
お礼を言って、和也は急いでトイレに戻った。

久美「あっ!和也くんどこ行ってたの!?心配したんだよ!」
和也「ごめん。これ…書いてもらいに行ってた」
和也は色紙を久美に見せると、「嘘…」と久美は驚いた表情をしている。

和也「6番の人優しい人だね…って、うわぁ!」
久美は和也に抱きついた。
久美「和也くん…ありがとう…」
涙声で久美は和也にお礼を言った。
和也「ううん、久美、誕生日おめでとう」
久美「ありがとう…本当にありがとう…」
2人は抱き合っていると、周りがザワザワし始める。
『ヒュ〜!』抱きついている2人を見て、周りが騒ぎ出す。

和也と久美は顔を真っ赤にして、急いでその場から離れた。

久美「あーっ、恥ずかしかった!!」
和也「うん…顔が熱い…」
久美「ふふっ、でも、最高の誕生日になった!和也くん、改めてありがとう!」
久美は今までで1番の笑顔で和也にお礼を言った。

しゃもじ ( 2022/01/22(土) 20:47 )