1章
8話
母鳥が着地した勢いで思わず後ずさりする。母鳥は驚く俺などお構いなしに鋭いクチバシで突いてくる。それをひらりと躱す。俺がいた場所はボコリと深さ1mほどの穴が空いていた。こんなの一撃でも当たったらくり抜かれてしまうな。

敵のレベルは......50だと!テチが攻撃されたら一撃で死んでしまうかもしれない。
こんなやつがいきなり出てくるなんて!もう少し経験を積んでから受けるべきだった!

「テチ!前衛は俺がやるから援護を任せた」

「はい。私が雷魔法で一撃で仕留めるので、ユート様はチャージできるまで母鳥の動きを止めてください」

「わかった!」

実質これが初めての戦闘。もちろん最初とは違い、女神の助けなしだ。やるしかない。
腰から、魔法銃を取り出し、飛び上がった母鳥に掠めるように発射する。できれば生け捕りにしたい。狙い通り弾は母鳥の翼を掠めた。このくらいじゃ怯まないか。母鳥の嘴が襲いかかる。俺は間一髪ギリギリで躱す。いくら自分のレベルが高くても、実戦を踏まなきゃ100パーセントの力は出し切れないか。
それならこれはどうだ。石ころを羽に全力でぶつける。鉄球のような威力の石ころをくらった母鳥は一歩2歩と退いた。よし、いけるぞ。再度飛び上がった母鳥に今度はさっきより大きめの石を投げた。石は右翼に当たり、体勢を崩したマザーバードは腹から地面に墜落した。テチに留めはあげたいから力を抜いて攻撃しよう。というか、レベル差的にテチの魔法のダメージはあいつに入るのか?まあいい、その時は俺が仕留めよう。それに、テチの呪文もそろそろ撃てる頃だろう。

「準備完了です。我に宿りし雷の力よ敵を穿て」

【サンダーボルト】

テチが手を振り下ろすと空から一筋の雷撃がマザーバードに落ちる。マザーバードは口から煙を吐きその場に倒れた。テチは「ふう」と一息ついた。すごい魔法だったし、集中力と魔力の消費がはげしそうだな。

「テチお前すげーな」

「そ、そうでもないですよ」

平静を装うがまんざらでもなさそうだ。証拠に頬が少し赤くなっている。

勝利を喜んでいた矢先だ。辺り一面が影で覆われる。まさか......。振り返ると倒れたはずのマザーバードが立っていた。そして、俺たちめがけて飛び上がった。まずい、呆気に取られて動きが遅れた。せめてテチだけでも!

「ユート様!」

動こうとするよりも先にテチが俺を突き飛ばした。テチは腕をクロスし、体の前に置き、少しでもダメージを軽減しようと構える。


「テチ!」

母鳥はテチ目掛けてのしかか......らなかった。テチの体に身を寄せている。どうやらあの一撃でテチを気に入ったらしい。後で聞いた話だと、モンスターは力を認めた相手に懐くことがあるという。

俺達はギルドにベビーバードを9体を持って行き、母鳥のことをお姉さんに説明した。
すると、近くの農場が引き取ってくれるらしい。母鳥はベビーバードを産めるらしく、危険を犯さずとも卵を収穫できるからである。
母鳥一体でなんと40万ユール、ベビーバード一体につき2000ユールを受取った。


■筆者メッセージ
やはりアイドルはいいですね。ステージで一生懸命歌って踊ってる姿を見るとつい心惹かれてしまいます。
( 2018/10/20(土) 23:07 )