4話
は少女を連れて酒場までやってきた。見た感じ一般層の飲食店は酒場のような店ばかりのようだった。俺はテーブル椅子に座った。しかし、女の子はなかなか座ろうとしない。
「どうした?座らないのか?」
「私は奴隷ですから」
「じゃあ、命令。椅子に座りなさい」
ようやく女の子は僕の向かいに座った。服は布だし、足元は裸足だし、痩せていて今にも倒れそうだし、なんか可哀想だ。色々と買い与えないとな。今はたくさん食べさせてあげないとな。俺は店員に話しかけた。カジキマグロとかを釣ってそうな見た目をしたいかついおっさんだ。
「すいません、おすすめの品をいくつかください」
「はいよ!」
少しして直ぐにライスに野菜と肉の炒め物、ポタージュスープが出てきた。どれもボリュームがあり、これで70ユールなんだから驚きだ。女の子はゴクリと喉を鳴らし、じっと凝視していた。
「お腹空いてるでしょ?食べなさい」
「い、いいんですか?」
女の子は小さな口いっぱいに料理を入れる。どれほどの間食べ物を口にしていなかったかは分からないが、よほどお腹が減っていたのだろう。というか、この子よく見たらなかなか可愛いな。
「名前は?」
「テチです」
「テチよろしくな」
テチは「はい」と返事をした。あまり感情を表に出さない子なのかな。あまり表情に変化がない。テチが喉を詰まらせたので、水を渡す。
「もっとゆっくり食べなさい。誰も盗らないし、毎日三食食べれるし」
「奴隷に三食だなんて、ご主人様は寛大な方ですね」
寛大ねぇ。奴隷制度っていう考えが根本的にないだけだと思うんだよな。生まれも育ちもここでこんなふうにしてるかって言われたら当たり前のようにイエスとは言えないな。
腹ごしらえも終わったところで自分とテチの生活品を買いに市場に向かった。その道中、俺はあることを思い出した。
「テチ、ちょっと首輪いいか」
「?」
俺は首輪に手をかざし、一瞬だけ魔力を送った。すると、首輪はパカりとはずれ、地面に落ちた。テチは驚いた顔をしていた。
「これすげー邪魔だっただろ」
「ありがとうございます。ご主人様」
「主人じゃなくてユートでいいよ。もう首輪はないし奴隷でもないだろ」
「ユート様」
テチは下を向いて少し笑ってるようにも見えた。そして、続ける。
「いいんです。私はユート様に仕えたいのです。これは命令されても変えることは出来ません」
テチは口角を上げた。俺はついドキッとしてしまった。この子の笑顔ってこんなにも可愛いのか。
「仕方ないなぁ。でももう少し言葉遣い和らげてな」