1章
10話
ギルドを後にして、俺は市場通りに向かった。テチは先程のクエストでの魔力の消耗で疲れているようだったから宿部屋に留守番させた。

前回市場を見て回った時は必要な物しか買わなかったし、今回はいろんな店を回ってみるとするか。よく見てみたらこの街には獣人族やエルフやドワーフなど様々な種族がいる。本当にファンタジーの世界に来たみたいだ。

ちょくちょくクエストに使えそうな薬草やアイテムを買いながら歩いていると、どこからか甘くていい匂いが。色々と屋台が見えてきたし、ここから食べ歩きエリアみたいな感じなのかな。

デジャブだ。手のひらサイズのりんごが飴でコーティングされている。りんご飴はこの世界にもあったのか!

「兄ちゃん珍しいだろ!セーカイで流行ってるって言うリゴンの実飴だよ!」

なんだそのりんごをもじったみたいな名前は!もっとりんごとかけ離れた名前の方がこっちもスっと受け入れられる気がするのに。と思いつつも25ユール払ってリゴンの実飴を買った。

「え、りんご飴より美味い」

味は同じだが、りんご飴の残念なモサモサ感がなく、シャキシャキしていて最後まで美味しい。リゴンの実ごめんなさい。完全にりんご飴の上位互換だ。

他にも粉物があったり、麺類や丼物などもあった。どれもなかなか美味しく、自炊ばかりの生活にはならなそうだ。前世では彼女はいたものの同棲はしておらず、長いこと自炊をしていたのだが自炊にもセンスは必要で、あまり得意ではなかった。

しばらく歩くと、食べ歩きエリアも終わって今度は普通の店舗が並んでいる。看板を見るとメインストリートと書いてあった。人がギリギリすれ違えるくらいの幅だった市場通りとは違い、馬車が通るための道路が舗装され、それが二車線ある。街中だからか馬は徐行スピードくらいの速さで通り過ぎてゆく。

店のショーケースに飾られた靴や服を見て歩く。街中にいる時は街に馴染んだ服装をしないとな。テチにも靴を買ってあげないとな。いつまでもあの布の靴じゃ可愛そうだ。

「やめて!」

突然女の子の叫び声が聞こえたからなんだか気になり、そっと声が聞こえた路地裏を覗く。中央通りの風景には見合わないゴロツキ数人が女の子を囲んでいる。これは助けないとな。今この瞬間犯罪が起ころうとしているのを黙って見過ごすわけにはいかない!......なんて正義感はないけれど、ただ女の子を見捨てるわけにはいかないな。屋根をよじのぼって女の子の前に着地しよう。なんかヒーローっぽいし。
なんてことを考えながら屋根によじ登ったのだが、意外と高くて足がすくむ。よし、跳ぼう。立ち幅跳びのように飛ぼうとしたのだが、どんなにレベルが上がっても変わらない運のステータスが最悪の俺は足元の屋根瓦が崩れ落ち、そのまま落下してしまった。

■筆者メッセージ
久々の更新となりました。
そういえば、けやき坂46の武道館ライブに当選しました。ひらがなけやきのパフォーマンスは初めて観るのでとても楽しみです。
( 2018/11/22(木) 17:57 )