暗い夜道は手を繋いで・・・
ハルキside
「では失礼しました」
「は〜い、まぁ今後は遅刻しない様に気をつけてね」
篠田先生に一言告げてから職員室を出て、珠理奈と横に並びながら教室へと向かった
結局のところ2ラウンド目は説教・・・と言うよりかは夏休み中にあったあの事件の話が大半であった
やはり中学生同士の傷害事件という事もあり、俺は病院に寝たきりだったから気付いてはいなかったが、世間ではニュースにもなり、そこそこ問題になっていたらしい・・・
「ねぇねぇ、ハルキ」
隣で歩いていた珠理奈がいきなり立ち止まって俺に話し掛けてきた
「ん、どうした?」
「ねぇ・・・今って何時?」
そう言うと珠理奈は廊下にあった時計を指差した
"時計があるなら普通に見ればいいじゃん"と思いながらも少し後ろに戻って時計を見てみると、短針はちょうど8のところを指していたのだった
「えぇ〜っと・・・何時だろう・・・」
想定外の時間過ぎて頭が混乱してしまった
普通に計算すれば、説教が始まったのが4時半だったため、今が8時だとすれば3時間半以上説教を受けていた事になるのだから・・・
「私の目が正しければさ、今って8時・・・だよね・・・」
「うん・・・多分・・・」
「・・・」
その事に気付いた瞬間に額から尋常じゃない位の冷や汗が滲み出てきた
大急ぎで教室に戻り、帰り支度をして珠理奈と共に学校を出たのであった
「はぁ〜何でもうこんな時間なの、そんなに私達って長く職員室に居たっけ?」
珠理奈に質問をされてよくよく考えてみると確かにそんなに長くいた気はしない・・・
「ん〜確かにそこまで長いとは感じなかったけど、今考えてみれば、説教が始まった当初は結構他の先生たちも居て色々やってたりしてたけど、説教が終わった頃にはもう篠田先生と俺達以外は誰も居なかったよな・・・」
「あ、確かに・・・」
篠田先生の説教会の事を二人で振り返っている間に辺りはどんどんと暗くなっていった
更に住宅街の近くにくると大通りとは違い、街灯などが少なくなりより一層と不気味さが増していった
「う〜薄暗くて気味悪い・・・」
「珠理奈、そういう事はなるべく言うなよ・・・こっちまで不安になってくるから・・・」
珠理奈がそんな事を言うばかりに、今まで"大丈夫"だと勝手に自己暗示を掛けていたのが解けたかの様に急に不安という感情が沸き上がってきた
「でもさこんな暗くて人通りも無い所だとさ、やっぱり不安にならない?」
「まぁ・・・そりゃあなるけども・・・」
だんだんと二人で不安という渦に巻き込まれている中、俺の足下の方から"カランッ"っと空き缶を蹴った様な音が響いた
「きゃ!」
「うおっ」
いきなり音が聞こえてビックリしたのか珠理奈は俺に抱きついてきた
「ちょ珠理奈、空き缶蹴った音ぐらいでビックリすんなよ」
「だって・・・」
泣きそうなぐらい、か弱い声で俺に抱き付きながら訴えてくる珠理奈
辺りが暗いためあまり表情は確認できないものの声だけでもその不安さや、恐怖感がひしひしと伝わってくる
しかし・・・
「おい、そろそろ離れろ」
「嫌だ」
珠理奈は俺に抱きついたままなかなか離れてくれない
確かに恐いのもあるのだろうがそれにしても明らかに長い・・・
最早恐怖とかはどうでもよく単純に"抱きつきたいだけなのでは?"と思ってしまうほどである
ただずっとこうされたままでは一向に家には帰れないため、仕方なく珠理奈を離した
「ずっと抱きつかれたままじゃ歩けないから・・・ほい」
そう言って俺が左手を差し出すと珠理奈は元気を取り戻したのか、俺の左手をしっかりと握り、さっきの声とは真逆なくらい明るい声でこういった
「ありがとう」
つづく