第一章
不遇の身
記念すべき初仕事の日
俺は緊張で胸が張り裂けそうになりながらも祖父と祖母に見送られて仕事へと向かった

初日は仕事場というかはある人の所に向かうようで、そこで俺がマネージメントする人物を紹介されるとだけ聞かされていた
電車を何本か乗り継いでおよそ一時間を掛けてようやく指定された場所の最寄り駅に到着した
駅から出ると見渡す限りの高層ビルが立ち並び、久々の都会に俺は胸を高ぶらせた

父親や弟が生きていた頃は家族三人で週末によく買い物などにも来ていた
しかし、一人になって祖父や祖母と暮らし始めてからはそんなおちゃらけた事など出来る訳もなく、平日、休日問わず俺は勉学に励んでいた

(懐かしいな…)

別にここに大層な思い出がある訳では無いのだが、少しだけそんな変な感じがしてしまった

祖父から渡された会社の地図を頼りに指定された建物を発見すると、急に不安がこみ上げてきて"一瞬帰ろうか"という意識が芽生えてしまったが、祖父の伝手でやっと就職したところをそんな程度で蹴る事は絶対に出来ないので、恐れながらも確実に一歩一歩建物の中へと歩を進めていった

指定されたのはこのビルの47階で会議室やら何やら、まぁ重要な部屋が多い階らしい
ビル内にはエレベーターと階段があったが、流石に47階まで階段は厳しいので、ビル内の端の方にあるエレベーターに乗りボタンを押そうと手を伸ばした
しかし、既に"47"のボタンの色は周りのボタンとは違う色へと変化していた
何故、色が変わっているのかという事に疑問を感じたが、答えは当然一つである
既に誰かがボタンを押した
つまりは俺以外の人間もこのエレベーター内に乗っているという事である

後ろを振り向くと案の定、そこには一人の女性が静かに立っていた
俺の分かる範囲で一階のロビーでは俺しか乗らなかったため、多分地下の駐車場から乗っていたのであろう
ただ俺は誰も乗っていないと思っていた訳だから、この人の存在にまったくとして気付かなかった訳だが…

(ってか、この女の人凄い可愛いな…)

決して物凄い美形では無いのだが、俺の好みの顔である
しかしながら、初対面の相手にいきなり話し掛ける事もないし、あちらから話しかける事もまずないので、エレベーター内には沈黙の時間がただただ続いていった

そして当然の事ながら、47階に二人揃って降りた
エレベーターを降りると俺は右の方へ、女は左の方の会議室の様な部屋へと入っていった



「失礼します」

しっかりとノックをしてから、部屋の中へと入ると、そこには一つの机が置いており、一人の男が椅子に腰かけていた
しかし、部屋のカーテンが開いており、逆光によってその男の顔はしっかりと確認が出来なかった

「ほぉ〜、君が落合ツバサ君か…話は君のお爺さんから聞いているよ」

ふてぶてしくゆったりと喋る男は俺の祖父の事を知っている様で多少半笑いに聞こえた
そして見た目の割には意外と身軽に椅子から立ち上がると、男は俺の方へと近づいてきた
ドンドンと近づくその間に男の顔がはっきりと見えてきて俺はとてつもない驚きを感じた

今この部屋で俺と面と向かい話していた男とはAKBグループのプロデューサーの秋元康だったからだ

つづく

■筆者メッセージ
"そろそろ"死んでも君を愛したい"の方も書かなきゃ"
と思いながらも一切手をつけていない筆者であります
(誠にすいませんorz)

それと物語の方ですが、未だに台詞という台詞がなく、淡々とナレーションが続いていますね
まぁ次回からかなり増えるのでもう暫くだけお待ち下さい

感想コメント待ってます
(指摘、ダメ出しコメントをする際はどこが悪いのかをしっかりと明記していただくようにお願い申し上げます)
ラキ ( 2014/01/05(日) 11:19 )