第一章【隊士集め】
二番隊 [上西視点]
隊の制服を着直し、山田に渡された本を手に取る。
ーー分厚いし、読みたないわ。
しかし、山田が過度に焦っているのを見ると、読まざるを得ないんだろう。

山本を襲ったのは浪士だということ。
その浪士らの上には吉田と戦った女がいること。
その女の名は「渡辺美優紀」ということ。
薮下は渡辺と繋がりがあること。

要約するとそんなことだ。
こんなこと紙一枚にまとめられるのだから、分厚くしないでもらいたいものだ。
ーーしかし、私はどこに向かえばいい?

「山本!」

叫んでも返事はない。
稽古の時間も終わったし、この時間ならだいたいは自室から叫んでも返事をするのに。
と、すると外出、か。

山本は負けず嫌いだからなぁ。
と、すると山本は襲われたところに行ったんやろう。

珍しく考え事をしながら私は刀を腰に差した。
ーー心が引き締まる。
刀を少し抜くと光った刃を眺め、山田の行った場所をかんがえる。
なんだかんだ言って短絡的な思考を持つ山田のことだ。
ーーあの茶屋しかないな。

私は自室を出、二番隊の隊員を広間に呼んだ。
五分もしないうちに続々と集まってくる。
見渡すと、やはり薮下は居なかった。

「四名おるな。突然やけど、今から討ち入りに行く」

「え!?」

二番隊士の谷川が目を丸くしている。
それは仕方ない。だが、行かざるを得ない。

「相手は……薮下柊や」

「間者(スパイのこと)なんですか?」

「たぶんな」

同じく二番隊士の山口に答えると、私は皆を立たせた。
谷川愛梨、山口夕輝、久代梨奈、門脇加奈子、そして私、上西恵に、山田菜々。
相手は薮下柊と十名程の浪士。
ーー燃えてくる。

「山田菜々と合流し、大河茶屋の二階に討ち入る。大河茶屋の客は山田が避難させているはずや。皆、死なんようにな。行くで!」

私達は一斉に外へ走った。
目指すは、山田のいる茶屋の二階、薮下柊だ。
山本のことを脳の片隅に置き、とにかく風を切るように走った。
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猫丸 ( 2013/12/17(火) 20:54 )