山田、始動。[山田視点]
彩……山本はどこに行くのか、それは承知の上だ。
きっと、いや、絶対に例の場所に行くだろう。
そんなことを考えながら私は監査部の部屋に足を進めている。
「吉田、白間、おる?」
「いますよ」
中から白間の声がし、私は障子を開けた。
すると、中には情報をまとめた資料を紙の穴に通し、本のようにしている白間がいた。
吉田はいない。
「吉田は?」
「刀持って何処か行きました」
ーー怪我をしているのに。
ため息を付く私に白間はさっきの本を渡してくれた。
表紙に「局長襲撃事件について」とあり、なかなかの厚さをしている。
ーー読みたくない。
パラパラと紙をめくりながら私ら口を開いた。
「ありがとう」
「いえ、仕事ですから」
懐に本を入れ、上西の元へ走る。
急がなければ吉田と山本が危ないだろう。
ーー先手必勝だ。
ーーしかし、二番隊四名と私でなんとか太刀打ちできるか?
「あ、山田さん!」
疾走する私に話しかけたのは矢倉だった。
彼女は上西の稽古を受けてきたようで、髪が汗で濡れている。
「矢倉、一番隊で屯所を守っといて!」
「はい! ……え!?」
唖然とする矢倉を置いて、私は廊下を走った。
後ろで矢倉の支持する声が聞こえる。
緊張感が高まってきた。
「上西!」
扉を勢い良く開け放つと、上西が着替えていた。
自分のしたことを改めて考える。
「何してんねん!」
叫んだ上西の大きな胸が見切れ、顔に血が上ってくる。
思わず後ずさりし、目を隠した。
「ごめん! 二番隊四名で私の元に来て! 理由はこれ読んで!」
その言葉と白間に渡された本を残し、私は部屋を出た。
そのまま私は外に出、門をくぐり、風を切るように走る。
道を開ける人に会釈しながら向かう。
戦いの場所へ。
吉田と薮下の会った茶屋を右手に見る。
薮下はまだ帰ってはいないだろう。
私達とは違う仲間がいるから。