少し気まずくなっていた関係
ゴールデンウィークのサッカー部の合宿前日。
仕度の遅い大輝は近所のスーパーで合宿に持っていく物の買い出しをしていた。
(まったく....めんどくせーな、サッカーの合宿なんだからボールとかユニフォームがあればいいじゃんか。)
歯ブラシなどの生活用品を買い揃えた大輝はレジで会計を済ませると袋に入った商品を受け取り、自宅に向かって歩いて行った。
大輝が歩くこと約15分、角を曲がろうとした時、大輝が冷やっとする出来事が起こるのだった。
「うっわ、あぶね!」
....キキーッ....ガシャーン!
何と大輝が角を曲がるタイミングは逆方向から来ていた自転車に乗った女性が曲がってくるのとほぼ同じタイミングで、大輝と自転車の正面衝突になりかけたのだった。
幸いにもぶつかる事は無く、お互いに避けあうことが出来たが、自転車は急ブレーキと急なハンドル操作でコントロールを失い、転倒してしまっていた。
大輝は慌てて振り返り、転倒した自転車の元へ駆け寄った。
「すみません、大丈夫ですが?」
「はい…、いてて…あぁ、血が....」
女性は額に擦り傷を負い、そこから軽く流血していて、左目に入る血を手で拭いながらゆっくりと立ち上がった。
「あ…」
大輝と女性は顔を見合わせるとお互いに口をあんぐりと開けた、目を丸くした。
「明音....」
「大輝....」
そう、自転車に乗っていたのは高柳だったのだ。
実はこの幼馴染みの2人は高柳が告白して以降は特別お互いに避けていた訳では無いが、少し気まずい距離の2人になっていた。
「血出てるぞ。」
「っ....」
大輝はたまたま持っていたハンドタオルで高柳の額から流れる血を拭いて、傷口を押さえた。
「痛いよ、ばか!」
「我慢しろって。」
2人は取りあえず、高柳の自転車を押して隣同士の家に帰った。
「明音、親は?」
「今日は2人とも帰り遅いって。」
「仕方ないな、手当てしてやる。」
大輝はそういうと家に入り、救急箱を持って出てきた。
「いいよ....///、自分でやるから!」
「いいからいいから!」
抵抗をしている、高柳だが大輝に押され、彼に手当てされた。
「よし、出来たぞ!」
「もー、私は子供じゃないんだから....」
高柳は少し頬を膨らませながら、額に貼られた絆創膏を気にして指で触れていた。
「....じゃあね。」
「なぁ、ちょっと。」
高柳は大輝に手当てされると、すぐに家に入ろうとしたが大輝に呼び止められた。
「何....?」
「あのさ、遠慮するなよ。」
「え?」
「だからさ、最近明音俺に全然話しかけて来ないじゃん....」
「........」
大輝に言われたひと言に、高柳は目を伏せて俯いた。
「だって、大輝は彩ちゃんの事が好きなんでしょ?」
「あはは。そんなこと気にすんなって....、明音が話しかけたりして来ないと気味が悪いよ。」
「えー、でも.....私、邪魔じゃない?大輝が彩ちゃんと話してるとき本当に楽しそうにしてるし。」
「何言ってんだよ、明音は明音で彩は彩だ。」
「分かった....遠慮しないよ。」
高柳はようやく、薄らと大輝に微笑みを見せた。
「とりあえず、合宿頑張ってね。」
「おぅ!ありがとな。」
大輝と高柳はそれぞれの家に帰っていった。
そしてゴールデンウィークの初日となる、翌朝、大輝は合宿場所への貸切バスに乗るために学校に集合していた。