とても大変な時間
彩と涼花が玲奈の所へやってくると、美優紀も二人より若干遅れてやってきて、さらに部室で仕事をしていた花音と茉夏も集まってきた。
それからマネージャー全員が外に集まる頃、グランドで練習していたサッカー部員も練習を一時的にコーチの男に止められ、赤と白のゼッケンに別れてチームを2つ作って待機していた。
「ゲームの前に、この3人は合宿の手伝いをマネージャーをしてくれる子たちだ。」
お手伝いマネージャー3人は顧問の方から部員たちに改めて紹介された。
ちなみにこのコーチは稲本太一という人物で、学校外から希美杉学園高校のサッカー部の指導に当たっている。
コーチからの紹介に彩、美優紀、涼花の3人は部員たちから歓迎の拍手を浴び、少し照れくさそうにお辞儀をしていた。
その後、玲奈を除く5人のマネージャーは球拾いが効率よく出来るように石灰で書かれたピッチの周りに散って待機した。
ちなみに球拾いをしない玲奈は稲本コーチの補佐として、彼に言われたことなどを記録する仕事をする。
そしてグランドのピッチ内では、稲本コーチの指示に従い、部員たちの紅白戦の試合が始まっていた。
縦横無尽に走り回る部員たちの姿に彩、美優紀、涼花の3人は目を輝かせて見ていた。
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(紅白戦)
ドリブルで突破しようとしてくる達也に一回は抜かれながらも懸命に追い掛け、達也のシュートを片足を伸ばして防いだ大輝。
(サッカーしてる大輝って、やっぱり普段とは別人のような…)
(凄いっ!達也頑張って!……あ〜、おしーぃ。)
(大輝先輩とあの人ってまだ2年生だよね…、凄いなぁ。)
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(何で詰めねんだよ!島崎!)
稲本コーチの罵声や、部員同士の掛け合う声が飛び交い、選手交代も頻繁に行われていき、めまぐるしく動き回る部員たち。
さらに、ピッチの外ではマネージャーもひたすら動いていた。
「はぁ…(結構大変やな…、球拾いって)」
球拾いに既に息を切らす、美優紀。
マネージャーの行なう球拾いというのは、ボールをそれぞれ1つずつ持ち、ゲーム中にボールがピッチの外に出たら、持っているボールを選手に渡し、その後転がっていくピッチの外に出たボールを追いかけて広いに行く作業を繰り返すことであった。
確かに全てのボールを追いかけるわけではなく、場所が5人で分担されているが、それでも普段はスポーツをしていない帰宅部の彩と吹奏楽部の美優紀には辛い仕事だった。
だが、花音、茉夏、涼花の3人は特に疲れる様子は見せずに淡々と仕事をこなしていた。
(花音…流石やな…、体力あるわ…)
花音と茉夏は普段からマネージャーをしているからなのだろうし、涼花も恐らく運動部なのであろう。
紅白戦はそれから、練習終了まで行われたのだった。
練習が終わると球拾いをしていた5人は疲れきっていた。
「ふぅ、彩ちゃん、大変やね、マネージャーって。」
「そうやな、花音ちゃんとかホンマにめっちゃ体力あるんやな。」
「いやいや、私もいつも終わればへとへとだから。」
こうして練習は終了して、部員たちとマネージャーは再び制服に着替えて帰宅するのであった。