第二章 出会いは突然
好きな人
放課後の部活動が終わった帰り道、大輝はいつも通りに高柳と帰っていた。

「それでさー、達也の奴、めちゃくちゃ張り切っちゃって。」

「さすが達也…、でも好きな人がやってくれるって言ってくれたなら男子ならそうなるんだろうな。」

帰り道に花を咲かせている話は、今朝の合宿中の臨時マネージャー募集のことだった。


実は募集を初めたこの日に美優紀が臨時マネージャーに自ら名乗りを上げたのだ。

「ふーん。でもみるきーもそういうこと何だろうな〜。」

「そういうことって?」

少し空を見上げる高柳に大輝が尋ねると高柳は急に大声を出した。

「えー!大輝知らないの!?」

「わっ!何をだよ。」

「うわー、本当に知らないんだ……」

大輝はキョトンとした。

「みるきーね、サッカー部に好きな人いるんだよ?女子はみーんな知ってるよ。」

「へぇ〜。てか、俺女子じゃないし!……で、誰?」

「達也だよ。」


高柳の答えに大輝は驚いた顔をした。

「おぉ…達也に奇跡が……両想いじゃん……」

大輝は達也の事を良く知っているので、達也があんなにも恋の倍率の高い美優紀と実は両想いをしている事実に驚きが覚めない。

「え……嘘だろ。渡辺さんってあーんなに色んな男から可愛いとか言われてるのに……達也が……」

「ふふふ、合宿でどうなるかだよね〜♪」

ニヤつく高柳の顔を見た瞬間に大輝は頭に浮かんだ事があった。

(達也が羨ましいや……もう一人のマネージャー彩がやってくれたり……)

「どうしたの?大輝。」

「え……あっ……大丈夫!」

「なるほど〜。」

「へ?」

まさか高柳は大輝の心を読めるのか……しかし……


「私にもう一人のマネージャーやってほしいんでしょー?」

「いやいや、全然そんなこと思ってないから〜。」

大輝がからかうように言うと一瞬だけ高柳の表情が曇った。

「ふーん。まっ、私はゴールデンウィークは予定入ってるからさ。」

「ほぅ。ついに明音も、例の先輩と……」

実は高柳は一年生のときの夏あたりで一つ上の学年の男子と付き合っていると噂になったことがある。


「違う!私、好きな人いるからっ!」

高柳は少し怒っているようだった。

「ごめんごめん。。って、好きな人出来たの?」

「うん//まぁ、できたっていうか結構長く片思い中なの……」

頬を赤くしながら話す高柳に一度大輝は笑顔を見せ、高柳の肩を叩いた。

「ま、頑張れよ!明音がそんなこと言うの聞いたこと無いから応援してあげる。」

「……うん…ありがと…… (気付いてよ、この馬鹿……) 」

高柳の頬はもっと赤くなり、彼女は下を向いた。

しかし、大輝はそんな高柳の気持ちと行動にはまったく気付かずに少し考え事をしていた。

(今日帰ったら彩にマネージャーのこと連絡してみよっと!)


気持ちに気付いて貰えない高柳は一つ頭に閃いた。

(むー大輝……そーだ!宿題の借りがあるじゃん!)

「大輝〜、今度の日曜日さ、部活休みなんだよね?」

「おう、そうだけど?」

「春休みの宿題のお礼してよっ!」

「あー、何すればいい?また何か奢ればいいか?」

「うーん……」

高柳は少しの沈黙の後、口を開いた。

「たまには私と二人で遊びに行ってよ!」

「おおー、いいね。」

こうして二人は遊ぶ約束をした。

だがしかし、高柳は気持ちに気付いて貰えなかった理由を知ることは"その時"まで知ることはなかった。


■筆者メッセージ
いつもありがとうございます。
バステト ( 2013/11/14(木) 22:03 )