危機一髪
「シュートって難しいな。」
「でも結構出来てるよ、もっとしっかり踏み込めば完璧だよ。」
大輝のアドバイスの元シュートの練習をする彩。
「ちょっとお手本見せてや、大輝くん。」
「分かった、ボール貸して。」
大輝は彩から受け取ったボールを足元に置くと、助走を付けてサッカーゴールに蹴り入れて見せた。
これまでの人生の時間のほとんどをサッカーに当ててきた大輝のシュートは周囲の男子生徒とは比べものにならない位の威力と精度を誇っていた。
「まぁ、こんなもんかな!」
「めっちゃ凄かった!ボールがゴールに吸い込まれるみたいだったでー。」
「ふふふ、サッカーは唯一の俺の取り柄だから。」
大輝が少しドヤ顔をしながら彩にそう言っていると蹴られたボールを拾いに行く彩に危険が
迫っていた。
その原因はなんと達也だった……
達也も美優紀と一緒にシュートの練習をしていたのだが、、
「達也、さっきから口ばっかりやん!私、達也がシュートするところみたい!」
「分かったよ、今見せてやる。」
目をキラキラさせて美優紀に迫られた達也が断る訳が無く、大輝と彩の目には入らない長距離からのロングシュートを放ったのが事の発端だった。
達也によって放たれたボールは見事にゴールの枠を捕らえていたのだが、その先にはボールを拾っている彩がいた……
「やっべ……山本さん!危ない!」
達也が慌てて大声で彩に注意をしたが、その声が届く頃にはボールは彩に迫っていた。
「…危ないって……わ……」
「山本さんっ!」
「え……きゃぁ!」
……………
「いてー、さすがに達也のシュートは強力だな……」
大輝は達也の声を聞いた瞬間に咄嗟に彩に覆いかぶさるような形になり、背中で盾になり彩を守っていた。
「まったく達也はあぶねーな!」
大輝は背中で受け止めたボールを達也の元に蹴り返した。
「ごめん……」
達也はしょんぼりした顔で美優紀と一緒にグランドの端の方に行ってしまった。
「……何か良く分からんけど、達也のシュートが凄いって事は分かった。」
美優紀は達也の肩を優しく叩いていた。
一方の彩は大輝の心配をしていた。
「ホンマに大丈夫なん!?えらい音してたで?」
「大丈夫だって、サッカーしてたら敵のシュートを体で止める場面なんてたくさんあるし。」
「そういう問題やないと思うねんけど……」
「いいの!そういう問題なの!」
「なら……いいんやけど……ありがとう。」
「山本さんが怪我したらギター出来なくなっちゃうから、無事でよかった。」
(大輝くん……ホンマに優しいな…)
彩は大輝の優しさに照れ臭そうにしていた。
それからちょっとした試合をして、サッカーの授業は終わったのだった。
「あー、疲れたー。」
「俺と大輝が同じチームだとつまんねぇな。」
「達也♪サッカーって楽しいね!」
美優紀も十分サッカーは楽しめたようだ。
そして、昼休みの昼食の時間になり、さっき彩と大輝で決めた通り、大輝たちのグループに彩が入っていた。
………のはずだったが?