【訓練】
02
街にある一軒の小屋に来た2人は、街で助けた女性、入山杏奈に夕飯を貰っていた。
子供達と一緒になって夕飯にがっつく勇介の隣で、奈和は皿にスープを盛る杏奈と話していた。


「じゃあ、1人で弟さんと妹さんを?」


「えぇ」


杏奈は数年前、両親を亡くした。突如、街に現れたホラーに襲われたのだ。それからは、年の離れた弟と妹を、1人で養っている。


「さっきの宝箱は?」


「これは、私達の生活費が入っていたんです。あの人達に盗られたら、私も盗賊になるしかありませんね」


冗談を言いながら微笑んだ杏奈は、勇介の前にスープを置いた。
それを一気に飲み干した勇介は、背もたれに寄りかかり、腹を両手で撫で回すように摩った。
皿を手に取り、勇介は叫んだ。


「お代わり!」


「はぁ〜い!」


杏奈は嬉しそうに皿を受け取り、鍋の前に立った。


「ちょっと勇介、少しは遠慮しなよ」


「だって杏奈さんの料理、絶品ですよ姐さん」


「フフッ。ありがとうございます」


扉がノックされた。勇介の前に皿を置いた杏奈は、返事をしながら扉に向かって行った。
奈和も見ている扉の前には、先程の女剣士が立っていた。


「お待ちしておりました。どうぞ中へ」


「邪魔をする……」


中に入った女剣士は、子供と肉の取り合いをする勇介を見た。


「あっ、さっきのお姉さん!?」


「お前……」


見合う2人の顔を、奈和は交互に見た。

椅子の脚に剣を立てかけ、座った女剣士は、向かい側に居る勇介を凝視していた。ど緊張している勇介は、目をキョロキョロと泳がせてから、目を合わせた。


「イヒヒ……!」


苦笑いをする勇介。
彼女の前に、杏奈が料理を並べた。


「どうぞ、遠慮なさらず召し上がってください」


「あぁ。遠慮なく」


女剣士はスプーンを手に取り、スープを掬った。


「どうでしょうか?」


「……美味しい」


杏奈は柔らかな笑みを浮かべ、喜びを表現した。女剣士は、勇介に声を掛けた。


「お前、魔戒騎士か?」


「えっ、あっ、えっとぉ……」


「おいおい勇介、お前さんはもう、魔戒騎士だぞ」


ザルバに言われた事を、勇介は答えた。
するとザルバが、女剣士に尋ねた。


「そういうお前さんは、一体何なんだ?」


「……私も魔戒騎士だ」


女は、魔戒騎士にはなれない。昔はそういうルールだったが、騎士に男も女も関係ないと、1人の魔戒法師が豪語しており、そのルールは破棄された。


「灼熱騎士 ヤイバの称号を受け継ぐ横山由依だ」


ザルバが、真っ先に反応した。


「聞いた事があるぞ。夜射刃といえば、暗黒騎士キバの弟子だったな」


「それは先代の話だ。奴は闇に染まった騎士。生かしておく訳にはいかない」


由依の目的は、この世界を逃げ回る先代夜射刃を受け継いでいた騎士を、抹殺する事だ。


「世話になった。私は、この辺で失礼する」


「えっ、もう少しゆっくりなさって下さい。今日はもう遅いですし……」


「気持ちはありがたい。だが私は、旅の途中だ」


由依は一足早く、家の中を出て行った。

黄金騎士 ( 2014/07/29(火) 18:38 )