【牙狼】〜伝説を継ぐ者〜 - 【出発】
03
準備を終えた2人は、ザルバと共に奈和の研究室に集まった。
剣だけを持つ勇介。2人分の資金が入った鞄を肩に掛ける奈和。


「準備はいいか?」


2人が頷くと、肉眼では見続けられない程の光で、ザルバが輝いた。
目を塞いだ2人。


気づくと2人は、見たことのない森の中に立っていた。空を見上げれば、木と木の間に見える青空がある。


「奈和、ここ何処?」


「魔戒……じゃないのかな?」


「あれ、ザルバは?」


キョロキョロと辺りを見回した勇介は、左手に違和感を感じた。見てみると、左の薬指にザルバが嵌っていた。


「すまない。街から離れた場所に飛んでしまったようだ」


奈和は遠くを眺めながら、ザルバに尋ねた。


「ここは?」


「紅蓮の森。少々、厄介な場所だ」


ザルバを見ている勇介は、目付きが変わった。奈和の前に飛び出し、鞘から剣を抜き出した。
すると、2人の元にナイフのような物が飛んできた。勇介は魔戒剣で弾き飛ばし、先端を前方に向けた。
驚いてしゃがんでいる奈和は、勇介の膝裏辺りにしがみ付きながら、両目を見開いていた。


「な、なに今の!?」


「こういう事だ。小僧、よく気づいたな?」


「なんか分からないけど、危険な気がして……」


「もう大丈夫だ。小僧、剣を仕舞うんだ」


言われた通り、剣を鞘に収めた勇介は、奈和を立たせ、膝についた埃を払ってあげた。


「ここは魔戒法師の導きがないと、危険な森だ。だが安心しろ。俺様が、お前さん達を街へ案内してやる」


「助かるよザルバ〜!」


「奈和、勇介に掴まれ」


奈和は戸惑いながらも、言われた通り勇介の肩を掴んだ。


「しっかり掴まれぇ!」


次の瞬間、2人の身体が軽く宙に浮き、引っ張られるように飛び出した。勇介の左手が伸びている。
どうやらザルバが、2人を引っ張っているようだ。


「うわぁああ!」


「きゃぁああ!」


前を飛ぶ勇介は、全身に木の枝などが当たっている。そのおかげで、奈和は殆ど無傷だ。

2人は、人気のある通りに出た。一本道の両脇には、無数の屋台が出ており、通りの先には、高い塀で囲まれた広大な街があった。


「着いたぞ。ボルシティだ」


「ボ、ボルシティ?」


街は階段状になっておるようだ。塀の上に、屋敷のような建物が見える。


「まずは、この辺りの出店で魔法衣を買うんだ。その格好じゃ、目立つからなぁ」


2人は、田舎者が都会に来たように辺りをキョロキョロとしながら、魔法衣を売っている出店を探した。

黄金騎士 ( 2014/07/07(月) 23:37 )