【出発】
05
奈和だけでなく、勇介も武器を物色していた。


「勇介、お前も魔戒銃以外に武器を持っていた方が、いいかもしれないぞ?」


「どうして? 魔戒剣だけで十分でしょ?」


「それは、訓練をした魔戒騎士が言うセリフだ。お前さんは黄金騎士と言えど、まだまだ未熟者だ。相手に剣を取られたらどうする?」


確かに、と納得してしまった勇介は、何も言わずに武器を選んだ。


「お爺さん、どの武器が強いの?」


前屈みになりながら、老人に尋ねた奈和。老人は、微かに見えた奈和の谷間をチラ見しながら、リボルバー式の銃を、両手で持った。


「これなんか、どうでしょうかねぇ」


老人が、銃口で壁を2回ノックすると、天井から鎖に吊るされた的が降りてきた。
それに向かって銃口を向けた老人は、3回発砲した。
的は、木っ端微塵にバラバラとなった。

驚く奈和に、老人は銃を渡した。


「これならホラーも、イチコロでしょう」


「じゃあ、これにします」


「ありがとうございます。サービスでホルスターと投げナイフも付けましょう!」


鼻の下が伸びている。奈和は、自分の谷間を見られていた事に気づいた。身体を起き上がらせ、胸元を両手で隠し、背を向けて赤面した。


「奈和、これなんかどうかなぁ?」


デザートイーグル。マグナム銃の中では最強の銃を選んだ勇介は、奈和に見せた。武器の知識など0である奈和は、答えようがなかった。

奈和は銃の他にも、短剣や弓を選んだ。
ザルバの勧めで、奈和は防具も購入し、2人は買い物を終えた。

勇介は、腰に魔戒剣と魔戒銃を装着し、コートの懐には、いくつもの投げナイフが仕込んである。魔戒騎士の使う投げナイフ、破邪の剣だ。
奈和は、腰回りに2丁の魔戒銃を、後ろには短剣を装着していた。背中にライフルと矢を背負い、左手で弓を持っている。

外に出た途端、奈和はザルバに尋ねた。


「ねぇ、もう少し露出を抑えられる服はないの?」


「我慢しろ。魔法衣ってのは、そういう物だ」


奈和は口を尖らせ、納得いかないのを態度で示した。


「なあザルバ、次はどうすんの?」


「バトルコロシアム。そこに行くんだ」


奈和が、ザルバの側に顔を近づけた。


「もしかして、あそこに見える丸い天井の?」


「あぁそうだ。あそこは街の住人が、月に一度己の力を試す為に組手を行う闘技場だ。あそこの訓練施設で、武器も使い方を教わるんだ」


その時、大通りの方から悲鳴が聞こえた。
顔を合わせた2人は、急いで向かった。


「た、助けてぇ!」


宝箱を抱え逃げ回る女性を、3人の盗賊が追いかけていた。街の住民達を手で押しのけ、店先に並んでいる商品を倒し、盗賊達は女性の宝箱を奪おうと、目を輝かせている。

女性が転んでしまった。周囲の人々は怯えてしまい、自分が巻き込まれないようにする為に、見て見ぬ振りをしていた。


「ヘッヘヘ。追い詰めたぞ。さぁ、その宝箱をよこせ!」


「こ、これは宝箱なんかじゃないんですって!」


そこへ勇介と奈和が、到着した。
2人が助けようとした、その時……。

女性の前に、別の女性が立った。

右手には、日本刀のような剣を持っている。


「な、なんだお前!?」


「あんたら、女性から物を奪おうとするなんて、情けないと思わないのか?」


男勝りの口調で話す女剣士はゆっくりと、鞘に収められたままの剣を抜いた。
それを見た盗賊達は、剣を抜いた。

黄金騎士 ( 2014/07/09(水) 23:18 )