【牙狼】〜伝説を継ぐ者〜 - 【出発】
04
胴体は黒をベースに、両腕は赤色のツナギのような魔法衣を身に纏い、黒一色のロングコートに着替えた勇介。
上半身は、黒一色の服に防具を付け、太腿を露出した短パンを履き、腰回りに垂を巻いている奈和。


「中々、似合ってるじゃないか?」


魔戒剣を腰に装着した勇介は、自分の服装を確認した。
奈和は恥ずかしいのか、垂をギリギリまで下げ、太腿を隠そうとしている。


「奈和、お前さんは丸腰だったな?」


「えぇ。そうだけど」


「お前さんでも、使う事が出来る武器がある。それを調達しに行くぞ」


ザルバに道案内され、2人は歩き出した。

ボルシティの正門前までやって来た。門番2人が、新参者である勇介と奈和に一目で気づいた。手に持っている槍をクロスさせ、道を塞いだ。


「待て。貴様ら、何処の者だ?」


「何処の者って……この国の者だけど?」


中に入れようとしてくれない門番達。
勇介の後ろにいる奈和は、勇介の左手を取り、ザルバに問い掛けた。


「ちょっとザルバ、どうするのよ?」


「大丈夫だ。おい勇介、魔戒剣を見せてやれ」


「えっ? う、うん……」


不安そうに、腰から鞘ごと魔戒剣を取り出した勇介は、門番に見せた。すると、鞘に刻まれている紋章を見た門番の態度が、一変。


「そ、その紋章は!?」


「お、黄金騎士!」


門番の声を聞いた周囲の人々は立ち止まり、衝撃を受けた。両目を見開き、剣を持つ勇介を見た。


「黄金騎士だ……!」


「黄金騎士だぞ……!?」


「が、牙狼が復活したのか……!」


町民の視線が、徐々に勇介へと集まってくる。


「あ、あはっ……!」


2人とザルバは、何とか街の中に入る事が出来た。綺麗な街。その一言に尽きる。
幻想の世界でしか存在しないと思われる天使が、鳥に混じって、何匹も飛んでいる。噴水では、人魚がハープを弾いており、ケンタウロスが、的に向かって弓を放ち、人間の子供達を喜ばせている。
空を舞うペガサスに人間が跨り、街の住人に手紙を届けている。


「す、すげぇ……」


ゲームの世界でしか見たことのない生き物に、勇介は若干、興奮していた。奈和は噴水の上に居る人魚に目を奪われている。


「ここは、夢の世界だ。ここならホラーが現れる心配はない。安心して暮らす事が出来る」


「それでザルバ、魔戒法師は何処に?」


「その前に、お前さんの武器を調達しに行くんだ」


忘れかけていた2人は、街の武器屋を探した。安全な街といえども、油断は出来ない。いつホラーが襲ってきても対抗出来るように、街のあらゆる所に武器屋が存在していた。その中の一店に入った。


「いらっしゃい」


誰かが2人を出迎えたようだが、2人の視界に人影はない。
奈和は膝を、何かで突かれた。
見下ろすとそこには、鼻の上に眼鏡を乗せた、小柄の老人が両手を後ろに組んで立っていた。


「あのぉ、武器を探しているんですけど……」


奈和が尋ねると、老人は和やかな微笑みを浮かべた。


「どんな武器をお探しで?」


それにはザルバが答えた。


「魔戒銃だ。威力が高いのを頼む」


左手を下げている勇介。ザルバと目線が同じ老人は、頷いて了承した。


「では、こちらへ」


右手を出した老人は、店の奥へと進んで行った。
その後をついて行く2人は、店内を見回していた。
暖簾を潜り、中に入って行った老人。2人は屈みながら、中に入った。

そこには、数種類の武器が、ずらりと並んでいた。

剣だけでなく、銃に槍、弓。斧や大砲、爆弾もあった。

剣にも種類がある。勇介の持っている魔戒剣と同じ両刃もあるが、他にも双剣、青龍刀、大剣、日本刀があった。全てが魔戒剣という訳ではなかった。

銃も片手で使用する物があれば、両手で使用するライフル式もあり、マシンガンにショットガンなどもあった。

黄金騎士 ( 2014/07/08(火) 20:13 )