【誕生】
05
すると勇介は、先程までいた場所から、元の世界へと戻って来ていた。


「勇介!」


名前を呼ばれ振り返ると、奈和がホラーに追われている最中だった。


「奈和!」


助けに行こうとした時、勇介は立ち止まった。

誰かが、自分を呼んでいる……。

勇介は辺りをキョロキョロと見回し、噴水の上を見上げた。

突き刺さっている剣が、勇介を呼んでいる。

考えている暇はない。勇介は噴水の中に入り、階段状になっている段を駆け上がった。
先端に登った勇介は、剣に手を掛けた。


「牙狼……俺に力を!」


剣を握る右手に、力を込めた。


「うあああぁああ!!」


剣を引き抜こうとする勇介の叫び声を聞いたホラーは、奈和を追うのを止めた。
背中に翼が生え、飛び上がった。勇介に向かって飛んで行った。


「勇介、危ない!」


その時、勇介は剣を引き抜いた。

洞窟にある鎧は、黄金に輝き姿を消した。

そして鎧は、勇介の身に纏わられた。

牙狼となった勇介は、迫り来るホラーを、すれ違うと同時に、手に持った牙狼剣で切り裂いた。

悲鳴を上げたホラーは、地面へと叩きつけられ、煙の如く消え去った。


「黄金……騎士……!?」


奈和は勿論、黄金騎士の事についても、調べてある。

魔戒騎士、最高位の鎧。

それが黄金騎士、牙狼だ。

奈和がデザインした通り、顔の部分は狼となっていた。

牙狼は噴水から飛び降り、奈和の前に着地した。
ゆっくりと奈和に近づき、目の前に立った。鎧を返還し、生身の姿に戻った。


「奈和……」


自信なさげに俯いた勇介。奈和は彼の頬を両手でつまみ、顔を上げた。


「勇介……格好良かったよ!」


勇介の好きな奈和は、笑顔になった時。それが今、目の前にある。
勇介も笑顔となった。

彼女が笑えば、皆が笑う……!

勇介は、そう思っている。


伝説は、受け継がれて行くもの。

勇介が、祖父に聞いた事のある言葉だ。

まさか自分が、伝説を受け継ぐ者になるとは、思ってもいなかったであろう……。

黄金騎士 ( 2014/07/04(金) 20:01 )