【牙狼】〜伝説を継ぐ者〜 - 【誕生】
04
2人は、広場に逃げ込んだ。中央に立つ噴水は、来客者を和ませる為に作られたのだが、2人は恐怖心のみだ。


「こ、ここは……」


勇介は、辺り一面を見回した。


「知ってるの?」


「うん。夢の中に出てきた場所なんだ」


勇介は、噴水の先端に何かを見つけた。


「奈和、あれ!?」


噴水の平らな先端には、洞窟にあった剣が突き刺さっていた。


「何でここに!?」


その時、勇介の周りに奇妙な光が現れた。


「勇介!?」


「奈和!」


2人の間を妨げる光の壁を、2人は叩きながら互いの名前を叫んだ。
徐々に光が強くなり、勇介の顔が確認できなくなっていった。


「勇介!……はっ!?」


振り返った奈和の背後には、迫り来るホラーが居た。


「奈和、奈和!」


ホラーに襲われそうになっている奈和を、勇介は見ていた。助け出そうにも、この壁が邪魔をする。

その時、奈和の動きが止まった。奈和だけではない。ホラーの動きも止まっていた。


「な、何だ……!?」


勇介は、壁を破壊しようと叩き始めた。拳で壁を殴ったが、ビクともしない。


「痛ってぇ……!」


拳を抑えた勇介は、その場に膝を付いた。


「ダメだ。俺はどうして、こう弱いんだ……」


いつも助けられてばかりの勇介は、こんな時でも彼女を助ける事が出来ない自分を責めた。

次の瞬間、辺りは光に包まれ、現実世界ではない場所になった。


「な、何だここは……」


すると背後から、ガシャンガシャンという金属音が聞こえた。
勇介が振り返ると、狼の顔をした黄金の鎧が、近づいて来ていた。


「わ、わぁ……!」


怯える勇介は、その場に尻餅を付いた。
黄金の鎧は、勇介の前で立ち止まった。


「黄金騎士、牙狼の称号を受け継ぐ者よ」


「ガ、ガロ?」


聞いた事の無い名前だった。
目の前に立つ黄金の鎧は、右拳を胸の前に添えた。


「その手で光を放ち、闇を切り裂け! そして守りし者となるのだ!!」


ピカンっと黄金の鎧は光輝いた。勇介は、目を塞いだ。

黄金騎士 ( 2014/07/04(金) 01:02 )