【誕生】
03
魔戒の事について、自分でまとめたレポートを読みながら登校をしている奈和。
その後ろから、鞄を両手で抱えた勇介が走って来た。


「奈和! おはよう」


「おはよう」


「なに読んでるの?」


「魔戒についてまとめたレポート」


勇介は横から覗き、一通り目を通した。


「ねぇ奈和、この狼は何?」


レポートには、奈和が想像で書いたと思われる鎧が書かれていた。顔に付ける鎧は、狼の顔をしていた。

鎧が狼を象っているのは、その昔、ホラーに一匹で勇敢に立ち向かい、それを倒したという黄金の狼の言い伝えから来ている。


「どう?」


「……なんか、変な絵だね」


むすっとした奈和は、勇介の頬を摘まんだ。


「痛い痛い痛いよぉ〜!」


「少しは、私を褒めなさい!」


奈和は手を離し、プイっとしながら歩き出した。つねられた頬を摩りながら、勇介も後を追った。

街中に来たとこで、勇介は奈和に伝えたい事があるのを思い出した。


「そういえば奈和、俺の夢の中に、この鎧が出てきたよ」


「夢に?」


勇介が見た夢は、逃げ纏う女性を追いかける男性。
血だらけの女性を追い詰めた男性は、女性を剣で斬りつけていた。
すると女性は、バケモンへと姿を変えた。
そして男性も、姿を変えた……。


「何か、こうやって……」


勇介は、側に落ちていた木の枝を剣に見たて、頭上に円を描くジェスチャーをとった。


「こうやったら、頭の上に光の輪が出来て、鎧が出てきたんだぁ」


勇介の言うことに興味を惹かれる奈和は、何かを思い出した。
鞄からレポートを取り出し、ページを捲った。


「あった!」


枝を捨てた勇介は、奈和の元に寄った。
レポートには、こう書かれていた。

守りし者は、所持する武器を翳し、鎧を召喚する……。


「勇介、もっと詳しく聞かせて!」


「う、うん!」


2人は話をしながら、学校へ向かおうとした時だった。

突如、前方から悲鳴が聞こえた。

2人だけでなく、周りの通行人も立ち止まった。
顔を合わせた2人は、駆け足で悲鳴のした場所へと向かった。角を曲がった大通りには、得体の知れないバケモンが、逃げ纏う人々を襲っていた。


「あれは、ホラー!?」


「ホラー!?」


奈和が調べたホラーは、日没にしか出現しないはずだった。
だが2人の前には、こうしてホラーが出現している。
現にこうして、本物のホラーが出現しているのだ。

ホラーが、2人に目を向けた。
ビクッとした奈和は、より怯えている勇介の手を取り、逃げ出した。
ホラーは、逃げ出した2人を追いかけた。

逃げ纏う人混みに紛れ、2人はビルの壁を四つん這いで走りながら追いかけてくるホラーから、逃走した。


黄金騎士 ( 2014/07/02(水) 23:22 )