01
暗い街中を逃げ回る、血だらけの女性が1人。
狭い路地裏に入り、障害物を倒しながら走った。
追われている……。
追手の足場を少しでも悪くしようと、障害物を倒した。咄嗟の閃きだ。
狭い路地裏を通り、辿り着いた広場。噴水のある綺麗な場所で心地よいのだが、彼女の感情は恐怖のみ。
自分が走って来た道を見た。誰もいない。ただ冷たい風が吹いている。
振り返った彼女は、流血する腕を抑えながら、走ろうとした。
彼女は立ち止まった。
目の前には、ゆっくりと自分に近づいて来る者が居た。
白いロングコートを身に纏い、赤い鞘の剣を持った男だった。
「こ、来ないで!」
彼女は左手を大きく振りながら、近寄る男に叫んだ。
聞く耳を持たぬ彼は、徐々に彼女との距離を縮めている。
左手に持つ鞘から剣を抜いた。
殺される。
そう思った彼女は振り返り、逃げ出した。
すると男は、天高く飛び上がり、彼女の目の前に着地した。
顎を引きながら、右手で持つ剣の先端を彼女に突きつけた。
後退する彼女を追うように、一歩ずつ近づいている。
「こ、殺さないで……!」
彼女が背を向け逃げ出そうとすると、彼は剣を振り上げ、右斜め上から彼女の背中を斬りつけた。
「ううっ!」
苦痛の表情を浮かべ、ゆっくりと彼の方へ振り返った。
彼は素早く前に飛び出し、彼女の脇腹を斬りつけた。彼女は悲鳴を上げた。
その時、人間である彼女の口が、花弁のように四つに開いた。
背を向けている彼は、背後に立つバケモンに対して、言葉を掛けた。
「貴様は、既に死んでいる。ホラーに憑依された時点でな!」
口の形が元に戻り、歯を食いしばる彼女は、両腕を顔の前でクロスし、一気に両側へ開いた。
奇妙な暗黒の光が彼女を包み込み、彼女は姿を変えた。
暗黒の身体は固く、棘のような角が生えており、眼球は白。絵に描いたような悪魔が、彼の前に立っていた。
彼に向かって奇声をあげ、威嚇をしたバケモンは、背に生えた翼を広げて飛び上がり、彼に向かって一直線に向かって行った。
彼は右足を軸にし、反時計回りに身体を動かした彼は、自分を狙ってきたバケモンの背中に剣を突き刺し、コンクリートの地面まで貫いた。
身動きを取れず、もがき苦しむバケモンから剣を引き抜き、蹴り飛ばした。
起き上がったバケモンは、両手を斜め下に広げ、奇声を上げた。
顎を引きながら相手を睨むのがくせの彼は、右手に持つ剣を頭上に突き上げ、円を描いた。
すると、その円は光り輝き、中から黄金の鎧が舞い降りてきた。
鎧は、彼の体へ吸い付くように纏われた。
光り輝く黄金の鎧を身に纏う騎士は、こう呼ばれている。
牙狼……。