第4章
08
「次はあなただよ。」

生田さんが玲奈の方を向いて言い放つ。いよいよか……。これで全てが決まるんだよな……。

「玲奈、頑張って…!」

僕の言葉に緊張しているのか集中しているのかはわからないが、玲奈は無言で頷くだけでピアノへと向かった。

席へと着いた玲奈は静かに鍵盤へとそっと指を置く。その指は微かに震えている。遠目から見て震えているのがわかるということは多分かなり震えているのだろう。だがそれでも玲奈は指を動かし始めた。

「この曲って……。」

玲奈の演奏曲はクラシックではなかった。その曲は「愛を込めて花束を」だった。まさに玲奈の気持ちを表しているようだ。



パチパチという拍手が部屋に響く。玲奈もさすがにピアノを続けているだけあって、演奏は上手かった。だけどやはり生田さんの方が演奏は上手かった…。

「審査の結果は引き分けだ。」

唐突に言葉が飛んでくる。この言葉に驚いたのは僕だけじゃないみたいだ。

「そんな!どうして引き分けなんですか!」

生田さんは柄にもなく焦っていた。確かに生田さんから見れば、この結果には納得しないだろう。

「演奏は君の方が上手い。でも彼女のピアノからは思いがとても伝わってきた。だからこの勝負、僕には決めようがないんだ。」
「引き分けなんて認めない!決着をつけなくちゃいけないの!」

決着っていっても……。玲奈もなんかオドオドしてるし……。一体どうするつもりなんだろうか。

「そうだ。奏人君が弾けばいいんだよ。それで負けたら私は素直に身を引く。」

そう来るか……。でもこれなら思う存分ってやつかな?

「奏人はそれでいいのか?」
「構わないですよ。」

悪いけど負ける気はしない。玲奈が繋いでくれたチャンスなんだから絶対に勝つ。

僕は玲奈にありがとうと短く言って席へと着いた。

■筆者メッセージ
めちゃイケ見終わりました!
奈和ちゃん………。珠理奈………。ぶっ壊れてましたね。さすがに奈和ちゃんの江頭には泣きそうになりました……。あそこまでしなくても…。

面白かったことに変わりはありませんが(笑)
ハヤブサ ( 2014/04/13(日) 23:46 )