07
「まずはどっちから演奏?」
僕は生田さんに尋ねる。直接的な関係は僕にはないが、とても重要なことだ。
「公平にコイントスでいいでしょ?表なら私、裏ならそっちから。じゃあいくよ?」
と言って生田さんはすぐさまコインを投げた。用意周到だな、と思うのも束の間、コインは生田さんの手に収まる。パッと手が上げられて出てきたコインは表だった。
「私からかぁ。じゃあ早速。」
言葉通り生田さんは椅子をパッパと合わせ椅子に腰かける。そしてすぐに手を鍵盤へと置く。この動作から明らかに負ける気がしていないのが窺える。表の反応はきっと玲奈の力量を確かめて、余裕になりたかったからだろう。
「英雄ポロネーズ……」
生田さんが選んだこの曲……。かなりの難易度のものだ……。余裕だけど演奏はやっぱり本気か…。
「さすがだな。」
パチパチパチと拍手の音が部屋に響く。やはり生田さんは上手い。でも僕は玲奈を信じてる。玲奈はきっと勝つ。