第4章
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「ちょ、何をするんだよ。」

唇が離れたため僕は生田さんにもの申す。

「えっ?キスだけど?」

あっけらかんに答える彼女に僕は困惑する。キスしてきた本人はキョトンとしてるし……。いきなりなんでこんなことをしてきたのかまったくわからない。

「なんでいきなりキスなんてするんですか。」

単刀直入が一番早い。僕はストレートに質問した。

「だって一緒にピアノを弾いてくれるんでしょ?だったらもうフィアンセだよ。フィアンセにキスしたらダメなの?」

まったく頭が追い付かない。なんて僕がフィアンセにされてるんだ…。意味がわからないというのはまさにこういうことなのだろう。呆れるを通り越してるよ……。

「一体いつ僕がフィアンセなんかになったんだよ。」
「いつって…?だって連弾するってことは結婚するってことだよ?それが生田家のしきたりだもん。」

は?と言ってしまうのをぐっと堪える。ここで怒ったところで意味はない。多分、彼女には無駄だろう。

「僕には彼女がいるんだよ。だから結婚なんてできない。」
「できないじゃなくて、しなきゃいけないんだよ?」
「……帰らせてもらうよ。」

埒が明かない。こういうときは帰るに限る。話にならないっての。

「帰っていいの?咲子さんだよね?お姉さんの名前。どうなってもいいの?」

部屋の出口へと向かっていた自分の足をピタリと止める。そして振り向く。そこにはニコニコしている彼女がいる。なんて人だよ……。平気な顔してあんなことをいきなり言ってくるなんて恐ろしい……。さっきまでの天然さんはどこ行ったんだよ……。

「わかったよ。その代わり、僕の彼女とピアノで勝負して勝つことを条件にさせてもらうよ。君なら負けないから問題ないだろう?」
「その程度ならいいよ。負けるわけないからね。」

この賭けに勝たないと僕は……。正直勝てないわけじゃない。でも確率的にはかなり低いし、普通じゃ無理だ。玲奈に頑張ってもらう必要がある。なんとしても勝たないと……。

■筆者メッセージ
ピアノ対決という方向に持っていきます。この小説はピアノを軸にしている作品ですので、音楽祭編だけではさすがに……。ということで今度はれなっちです。
ハヤブサ ( 2014/04/03(木) 23:05 )