03
「なんだよ…この大豪邸は………」
僕は今、僕に会いたいらしいお嬢様の家の前に連れてこられたんだけど……。とにかく大きい。こんな家、見たことないよ。
「入れ。」
そのお嬢様とかいう人の部屋の前まで連れてこられる。そして金谷とかいう執事は僕を残して去っていった。
コンコンコンと三回ノックをする。すると中から「入って」という声が聞こえてきたので扉を開ける。
「神山奏人だよね?凄い…ホンモノだ……。」
って言われても僕の方が驚きなんだけど……。なんでこんな人が僕の目の前にいるのかわからない。僕じゃ手が届かないところの存在なのに……。中学のときの全国コンクールを三連覇、ピアノをやっているのなら知っていて当たり前。生田絵梨花、神童じゃ足りないくらいの人物だ。
「なんであなたのような人が僕に?」
「うーん……あなたなんて堅苦しいなぁ。絵梨花でいいよ?呼んだ理由は一つかな。私とピアノを弾いてくれない?」
思わず「えっ?」って言いそうになった……。意味がわからない。連弾をするのなら僕より上手い人とすればいいのに…。なんで僕なんだ?
「奏人君のピアノには他の誰にもない強い思いを感じたからだよ。」
まるで心を見透かされたみたいだな……。強い思い…か。自覚がないわけじゃないんだけど………
「奏人君はピアノを誰かのために弾いてるよね?だから奏人君がピッタリなの。私のために、私と一緒にピアノの弾いてくれない…?」
別に連弾をすることぐらい断るようなことじゃないから僕は「いいよ」と返事をする。そしてその返事を聞いて生田さんは素直に喜んでいる。そんなに嬉しいんだな、と思っているといきなり、僕の唇に何かが当たる。それが何なのかを理解するのに時間はかからなかった。生田さんは僕にキスをしてきたのだ。