04
「咲姉、これに出てもいいよね?」
そう言ってさっきの招待状を見せる。
「本気で言ってるの?」
「本気だよ。本気じゃなかったら自分から言い出さないって。」
「奏人が決めたなら私は反対しないよ。でも…大丈夫?」
「心配ないよ。」
短く姉に言い切ってピアノ部屋へと戻る。
「さてと……練習しないと。」
まずは選曲か…。音が聞こえなくとも弾ける曲なんてないし、今の自分にどのくらいの曲が弾けるかが、まずわからない。となると選ぶ理由はこれしかないかな。加藤さんのために弾くという意味で……
「『エリーゼのために』にしよう。」
そうと決まれば練習だ。聴こえないのは辛いけど、頑張るしかない。
「疲れた……。」
もうこんな時間か…。あっという間に二時間かもたってしまった。こんなに熱心に弾いたのは久しぶりかもしれない。昔ならば、このぐらいでは根を上げなかったのに…。
自分を音は録音すれば聞けるのが幸いだった。ピアノに触ると聞こえないのはやはりどこかで母への気持ちとショックがあるからなのだろう。
「ご飯だよー!」
ちょうどいいタイミングだ。一度休憩するとしようかな。