04
「絶対そうだって。」
「え、でもさ…。」
「話しかけてみようよ。」
「あのさ…、神山奏人君だよね。」
「そうですけど。」
そうがどうしましたか、的に淡々と返す。
「ピアノやってたりするかな…?」
「……!すみませんが何も話すことはありません。」
荷物を持って椅子から立ち上がり、扉の方へ向かう。
「ちょっと待ってよ…。」
「待つ気はありません。」
「天才小学生ピアニスト神山奏人…。」
僕に話しかけてきた方とは違う子が呟いた。幸い周りには聞こえない音量だった。
「やめろ。二度とその言葉を口にするな。僕はもうピアノなんて弾かないんだよ。」
「やっぱりそうなんだ…。どうしてやめ…「関係ないだろ。」」
早足で僕は教室を出た。
やっぱり知ってる人がいたか…。もうピアノなんて弾かないのに…、いやもう弾けない…か。
〜sidechange〜
「やっぱり当たってたね…。」
そう呟くのは私の友達の竹内美宥。
私の名前は加藤玲奈。小さいころから美宥とは友達で一緒にピアノをやってきた。私の一番の親友だ。
そしてさっきの神山奏人君はピアノ界では超がつく程の有名人だ。“天才出現”と月刊ピアノの一面を飾っていたのを覚えている。
しかし彼は中学生になって急にピアノ界から姿を消した。だから今、話を聞きたかったのに…。なんで弾かなくなったのかその理由を知りたい。
「美宥はどう思う?神山君のこと。」
「何かあったみたいだよね…。」
やっぱり美宥も同じことを思ってるのか…。
「明日から隣だけど話してくれるかな…。」
「わかんないね…。」
一体彼に何があったのだろう…。